大間原発建設差し止め訴訟にご支援を
南北海道自然保護協会 会長 乳井幸教
ことの発端は、函館市民になんの説明もせずに大間原発の建設工事をはじめたことです。大間原発を建設中の青森県大間町(大間崎)と函館市の汐首町(汐首岬)とは、津軽海峡をはさんでわずか23.5kmの距離しかありません。
函館市は急きょ、どのようなものをつくるのかについて、当事者である「国」と工事を請け負っている「電源開発」に問い合わせました。しかし、立地する住民以外にたいしては説明の責任も義務のない、との回答です。工事はドンドン進みました。
ところが2011年3月11日、東日本大震災が発生しました。同時に福島第一原発で大事故が勃発しました。全国54カ所の原発は稼働を停止しました。
この頃から、函館市や近隣市町の住民の間で大間原発にたいする関心が高くなりました。函館市町内会連合会や有識者が動きだしました。市議会でも大いに議論されたあと、工藤壽樹市長以下市議会議員全員の賛成のもと、東京と函館の弁護団10人を組んで2014(平成26)年4月3日、差し止め訴訟をおこした次第です。
ご存じのとおり、函館市は水産業の町として海なくしては生活の成り立たないといっても過言ではありません。イカ、マグロ、カゴメコンブ、マコンブ、その他魚介類に頼って生きている町です。また、函館市は観光都市としても知られ、日本はもちろん世界中の観光客がやってきます。
そこへとんでもない政府命令がやってきました。居住者が30万人を超える市町村においては、地域住民が直ちに安全な場所へ避難できる道路と施設を計画・策定すること、という内容です。工藤市長の怒りは頂点に達しました。「建設差し止め訴訟を起こしているときに、このようなことが受け入れられるのか」。そして今にいたっています。
ご支援をよろしくお願いします。裁判は東京地裁でおこなわれています。裁判の傍聴もよろしくお願いします。
(2016年7月)
函館市長の訴え |
なぜ大間原発の建設凍結を求めるのか
平成26年4月
函館市長 工藤壽樹
平成23年3月11日の東日本大震災から丸3年が過ぎましたが、いまなお、福島県では福島第一原発の事故処理が終息しておらず、13万人の方々が避難を余儀なくされております。
私たちは、福島第一原発のあの事故のすさまじさを見て、原発をこれ以上増やすべきではなく、建設中や計画中の原発は当分凍結すべきと考え、国や事業者である電源開発(株)に大間原発建設の無期限凍結を要請してまいりましたが、前政権の下で平成24年10月1日、建設が再開されました。
その後、国は、福島第一原発事故を踏まえ、万が一の事故の際には被害が大きく危険となる地域を、これまでの8〜10kmから30kmに変更したところです。
その30km圏内に入る函館市や道南地域への説明もなく、また同意を得ることもなく建設が再開され、建設後には、大間原発の事故を想定した地域防災計画や避難計画を定めることを義務づけられることは、整合性を欠き、誠に理解しがたいものです。
平成24年10月、25年2月には、国や事業者に対し、函館市をはじめ道南の自治体や議会、経済界、農漁業団体、住民組織などが名を連ね、大間原発建設の無期限凍結を求めてきたところです。
平成25年7月には、福島第一原発の周辺自治体である南相馬市と浪江町を訪問し、事故当時や現在の状況についてのお話しをお聞きし、原発事故が起きれば、周辺自治体も壊滅的な状況になるということを確認いたしました。そして、住民の生命、安全を守らなければならないのは、最終的に基礎自治体である市町村であることをあらためて強く感じたところです。
提訴については一昨年から準備を進めてまいりましたが、政権交代後、国民の関心が経済再生に向けられ、このような状況のもとでは、大間原発の問題は一地域のこととして見られ、埋没しかねないことから、原発問題について再度、世論が盛り上がる時期を見極めてきたところであります。
今後は、大間原発の安全審査の申請が予定されておりますし、既存原発の再稼働にかかわって再び、原発に対する世論の関心も高まってくるものと考えております。
市民の生命や財産を守り、函館市という自治体を将来の世代に引き継いでいくためにも、司法の場において大間原発の建設差し止めを訴えてまいります。
◆原発に対する函館市の考え方
- 原発をこれ以上増やすべきではなく、建設中や計画中の原発は無期限で凍結すべき
- 原発の新設は、福島第一原発の大事故を起こした我々世代が判断することではなく、他の安全なエネルギー開発の状況を見ながら将来世代の判断に委ねるべき
- 原発を建設するとしても、あらかじめ自治体が避難計画を立てられるかどうかを審査し、少なくとも30km圏内の自治体の同意を得るべき
- 脱原発・反原発や原発容認などさまざまな意見があるなか、本市にとっては大間原発の無期限凍結が最大の課題であり、原発政策に対して特定の立場はとっていないことで多くの理解が得られ、そのことで道南地域がまとまって行動している
★関連ページ
- 火山噴火影響想定のズサンさをつく〜大間原発訴訟第9回口頭弁論〜(2016/07/14)
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