「第37回東北自然保護の集い」の現地報告(要旨)

貴重なクロマツ林を守るために

〜山形県と酒田市による風力発電建設計画の問題点〜

庄内海岸のクロマツ林をたたえる会 理事長 高橋寿昭さん






 山形県と酒田市は、同市十里塚海岸の隣接地で風力発電施設の建設を計画しています。その問題点を「特定非営利活動法人 庄内海岸のクロマツ林をたたえる会」の高橋寿昭理事長が報告しました。

 山形県は2012年3月、「山形県エネルギー戦略」を策定した。「卒原発社会」の実現に向けて、再生可能エネルギーによる電力を確保しようというものである。同年8月、県と酒田市は同市十里塚海岸の隣接地にそれぞれ3基計6900kW、合計6基1万3800kWの風力発電施設の建設を計画した。この計画は問題点が多い。
  • 生物多様性保全などの視点がない。たんに風況がよいというだけで計画している。

  • 脱法行為である。出力が7500kW以上であれば法にもとづく環境影響評価の実施が義務づけられている。だが、それぞれの出力は7500kW未満なので自主的な調査を実施するとのこと。しかし、事業主体は異なるものの同じ地域に建設が計画されているので、一括の事業として判断すべきである。この手法は法にもとづく環境影響評価を避けるもので、模範となるべき行政がみずから脱法行為をおこなっている。

  • 貴重な自然景観と生態系を壊す。本地域にはクロマツ砂防林がある。庄内海浜県立自然公園に指定されるなど、地区を代表する自然景観を有している。そのため、2010年に風力発電計画があったものの、景観にいちじるしい影響をおよぼすとして建設が認められなかった経緯がある。
     波打ち際からクロマツ林にいたる砂草地は移行帯と呼ばれ、海浜植物や砂丘特有の自然生態系が維持されている貴重な場所である。クロマツ林を安定的に支えている場所でもある。また、最上川河口周辺に渡来するガンカモ類の渡りのルートにもなっている。コアジサシの集団営巣地があり、本邦の北限にあたる。オオタカなど猛禽類の繁殖も確認されており、自然環境として非常に貴重な地区である。

  • 説明責任が欠けている。県も酒田市も、事前に県民、市民にまったくの説明せずに事業計画を発表した。その姿勢は現在もつづいている。
 当会は、祖先が育ててきた貴重なタロマツ林を後世に残すため、風力発電建設中止を求めていくことにしている。



酒田市十里塚の風力発電建設予定地を見学する「第37回東北自然保護の集い」の参加者。
後方はクロマツ林=2016年10月23日






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