風力発電は原発の代替にならない

〜三重・青山高原の大型風車を見学〜







 全国自然保護連合のメンバーは(2013年)3月15日、三重県青山高原の風力発電を見学した。「青山高原の自然を守る会」の武田恵世(けいせ)代表に案内していただいた。


景観は台無し

 青山高原は津市と伊賀市にまたがっている。山容が布を引いたように優美であるため布引山地とも言われており、国定公園に指定された。標高は700〜800mである。

 その高原に大型風車が51基建設されている。運営会社は、31基が「シーテック」(中部電力の子会社)、20基が第三セクター「青山高原ウインドファーム」(シーテック、津市、伊賀市が出資)だ。

 高原の頂上ではなく、中腹のあちこちに大型風車がびっしり建設されている。景観は台無しである。遠くからみると、尾根に針を何本も突き刺したように見える。

 青山高原には、青山高原ウインドファームがさらに40基の増設を計画している。これが建設されると日本最大規模の計91基となり、高原は檻(おり)で囲まれるような景観になってしまう。青山高原の自然環境と景観はメチャクチャに破壊される。


発電に役立っていない

     「青山高原の大型風車が発電の役に立っていれば、多少は許せる。ところが、ほとんど役立っていない。税金を食っているだけだ。だから許せない」
 武田さんはこう述べた。

 風力発電が役立たないのは、著しく不安定だからだ。風が弱すぎると風車は回らない。逆に、台風時のように風速25m/sを超える風が吹くと自動停止である。しかも、風車はしょっちゅう故障したり破損したりする。

 この日は微風だったため、ブレード(羽根)がまともに動いている風車は少なかった。停止しているものが20基以上もあった。故障中の風車や、中腹に建設された風車である。風が山にさえぎられると、山かげの風車は動かない。

 風車が定格出力で発電できるのは、風速12〜25m/s(傘がさしにくいくらいの風)とのことである。そんな風が吹くのは、北西の季節風が吹く真冬である。ようするに、風車は真冬しかまともな発電ができないということだ。武田さんの試算によると、シーテックが増設した「ウインドパーク美里」(8基)の設備利用率(発電できた年間の時間の割合)は7%以下とのことである。


「補助金をもらえるので、風車はつくるだけでよい」

 中部電力の子会社であるシーテックはなぜそんなものを次々と建設するのか。

 ひとつは、「良いことをやっている」と国民をだますためである。

 もうひとつは、補助金獲得である。建設費の3分の1を国が補助してくれた。補助金申請は概算見積もりでいい。国(経済産業省)はノーチェックで補助金を交付する。だから、たとえば1基の建設費が1億円の場合、申請書に建設費9億円と記載すれば3億円の補助金をもらうことができる。差し引きで2億円の儲けとなる。さらに、建設費の3分の2については、低利融資と利子補給、所得税減税まで受けられる。事業者にとって、こんなにうまい話はない。

 中部電力のある幹部はこう述べたそうである。
     「補助金をもらえるので、風車はつくるだけでよい。風力発電は不安定なので、送電網にはこれ以上入れないように」


風力発電では原発を減らせない

 武田さんは次のように教えてくれた。
     「風力発電の電気を送電網に入れると、電力系統が不安定になる。風の強さで送電量が刻々変化するからだ。その対策としては、風力発電の電気を大型蓄電池に貯め、電気系統に一定量を供給することが必要だ。しかし、それは実用化できていない」
     「したがって、風力発電を増やせば火力発電所や原子力発電所を減らせるということにはならない。じっさいに、各電力会社に問い合わせたところ、風力発電量が増えた時間帯に、火力発電所の出力を下げ、燃料を減らせたという記録はなかった」
     「ようするに、風力発電は火力発電や原発の代替にならないということだ。電力会社が全国のあちこちで風力発電を手がけているのは、原発推進が目的と思われる。電力の不安定さや再生可能エネルギー賦課金の値上げに国民や企業が音を上げ、“やっぱり原発が必要”という世論をつくりあげるためだ」


故障が多く、採算はとれない

 武田さんはこんな話もしてくれた。
     「風車は故障が多い。青山高原の風車もひんぱんに故障している。もともと、風車は山の上に建設すべきでないといわれている。乱気流が多いので、故障しやすい」
     「また、風力発電は採算をとるのが困難だ。全国の自治体が経営する風力発電のうち85%は赤字となっている。残り15%は、形式上は黒字となっているが、修理費を含めていない。修理費を含めて黒字なのは、全国で2カ所だけだ。それも、故障すると赤字に転化する」

 3月中旬、京都の太鼓山風力発電所(全6基)で、重さ45トンのプロペラ部が支柱から落下した。この出来事は武田さんの話を裏付けるものだ。落下当時の現場の風速は発電に適した15〜17メートルと報道されている。同発電所は2001年11月に運用開始し、6基のうち2基は落雷などで停止していた。関西電力に売電しているが、赤字続きである。2011年度も4500万円の赤字という。
 このように、故障が多く、採算はとれないというのが風力発電の真実である。

 青山高原を案内していただき、風力発電の不都合な実態がよくわかった。








青山高原に林立する大型風車



遠くからみると、尾根に針を何本も刺したように見える



この日は微風だったため、停止しているものが20基以上もあった。




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