世論を味方につけることが大事
〜それなしでは強大な相手に勝てない〜
中山敏則
全国自然保護連合などは2015年12月5日、「自然と環境を守る交流会」を法政大学で開きました。テーマは「海・山・川・いのちをどう守る」です。
「どう守る」で重要なことのひとつは、世論を味方につけることです。「よみがえれ!有明訴訟」弁護団長の馬奈木昭雄弁護士は講演でこう述べました。
「正しいことを言うだけでは勝てない。力を持った正義が勝つ。力というのは国民世論である。国民の支持をどうやって勝ちとるか。これが勝負になる」。
官邸前行動を3年半以上つづけている首都圏反原発連合の原田裕史さんはこう話しました。
「私たちは国民の支持をどう得るかを模索しつづけた。その結果、シングルイシューとよばれる流儀を取り入れた。原発問題をアピールするデモンストレーションなのだから、テーマを原発にかぎるということである。これは幅広い国民の支持を得るための手法として正しかった」。
「三番瀬を守る会」の田久保晴孝さんは、東京湾三番瀬の埋め立てを中止させた運動を報告しました。
この運動は世論喚起に力をいれました。署名も30万集めました。その結果、2001年春の知事選では三番瀬埋め立てが最大の争点になりました。新聞各紙の県民世論調査では「埋め立て反対」が過半数を占めました。選挙の結果、埋め立て計画白紙撤回をかかげた候補が当選し、埋め立てを中止させました。
「真間川(ままがわ)の桜並木を守る市民の会」の鳥居雪子さんは、治水対策を転換させ、桜並木を保存した運動を報告しました。
市川市の市街地を流れる真間川の改修工事で約400本の桜並木を伐採するという計画がもちあがったため、対案を示して桜並木の保存を訴えました。対案というのは、「河川を改修しても水害を防ぐことはできない。遊水地や雨水貯留施設の整備などを含めた総合治水対策を進めるべき」というものです。
長年にわたるねばり強い運動の結果、「桜なんて言ってられるか」と批判していた住民も、「治水も桜も」に理解を示すようになりました。県は、真間川流域の治水対策を河川改修一辺倒から総合治水に転換しました。約400本の桜並木は、半分が残され、残り半分は河川改修後に復元されました。そして、遊水地や分水路、雨水貯留施設の整備などが進んだ結果、真間川流域の浸水被害は激減しました。
これらは世論喚起の大切さを示しています。逆にいえば、世論の支持を得なければ、強大な相手とたたかって勝つことは不可能ということです。それは幾多の実例が証明しています。
(2016年1月)
★関連ページ
- 勝利のカギは世論喚起、幅広い共闘組織、多彩な運動〜三番瀬運動の教訓(中山敏則、2020/10)
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