三番瀬市民調査の会
■調査のきっかけと目的
三番瀬は東京湾奥部に残る貴重な干潟・浅瀬である。しかし、浦安寄りの猫実川(ねこざねがわ)河口域が開発や人工改変の危機にさらされている。そこで、この海域のありのままの姿を調べるため、2003年に市民調査の会を設立し、調査をはじめた。三番瀬の保全活動にたずさわる団体や市民、学生を中心に、専門家や研究者の指導を受け、学習しながら調査・観察を続けている。
■調査の特徴、状況、成果
猫実川河口域は、大潮の干潮時に広大な泥干潟が現れる。干潟には、モーターボートやゴムボートを使って渡っている。
調査は、干潟が昼間に干出する3月から9月にかけて月1回実施している。科学的データの集積や、見る、聞く、触るといった、市民の五感を生かした地道な調査を心がけている。
調査項目は、生物、カキ礁、アナジャコ巣穴数、酸化還元電位、強熱減量、塩分濃度、透視度、マガキの重金属などである。毎回参加する調査員(十数人)のほか、学者、研究者、大学生、子ども、弁護士、議員、ジャーナリストなども随時参加している。これまでに1回以上参加した人は200人を超える。
9年間におよぶ市民調査の結果、猫実川河口域は三番瀬の中でもっとも生物相豊かな海域であり、東京湾漁業にとって大切な“いのちのゆりかご”となっていることを証明した。また、この海域に約5000uの天然カキ礁が存在していることや無数のアナジャコが生息していることも、はじめて明らかにした。
これまでの調査の成果は、
- 多種多様な生き物の生息を確認したこと(動物141種、植物16種)
- 大潮時に広い泥干潟が出現することを確認したこと
- 5000m2におよぶカキ礁の存在を発見し、その生態系の重要性を報告したこと
- アナジャコ類が高密度で生息することを調査・報告したこと
- 酸化還元電位、粒度、強熱減量、塩分濃度、堆積状況などの測定・調査や、カキ・底泥の重金属分析、カキ礁の掘削調査などをおこない、水質や底質などを報告したこと
市民調査の結果は、県知事の諮問機関であった三番瀬円卓会議・三番瀬再生会議や関係行政機関へ提供し、三番瀬の保全に寄与している。
■小冊子が大好評
年に1回、市民調査報告会を開き、調査結果を発表している。2007年4月には、国内や米国のカキ礁研究者を招き、国内初となる「カキ礁シンポジウム」を開催した。
今年2月は、これまでの調査結果をまとめたカラーの小冊子『三番瀬・猫実川河口域は“宝の海”』を発行した。たいへん好評である。1500冊がすぐに売り切れ、増刷した。『東京新聞』と『読売新聞』が大きく報じてくれた。NHK−FMも、4月21日の生放送で当会の牛野くみ子副代表に30分間インタビューし、小冊子の内容をくわしく紹介してくれた。
当会は、三番瀬を守る連絡会、千葉の干潟を守る会、三番瀬を守る会、三番瀬を守る署名ネットワーク、千葉県自然保護連合などと連携しながら、三番瀬の恒久保全とラムサール条約湿地登録を実現するため、今後も調査を継続し、充実させることにしている。
(2011年9月)
《参考ウェブサイト》
http://www.sanbanze.shizen2.jp/simintyosa.html
塩ビ管を押しこんでアナジャコを採取
アナジャコ
猫実川河口域のカキ礁は、マガキがタワー状に積み重なっている
猫実川河口域は珍しい生き物もたくさんすんでいる。
写真は、トレイの上に立ったままじっとしているギマ
ギマ
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