三番瀬を守る会
■三番瀬埋め立て計画と当会の活動
当会は1993年3月、地元の船橋市において、「三番瀬」をアピールするためのビデオをつくる会を発展させるかたちで結成された。
当時、東京湾最奥の干潟、浅海域である三番瀬は見通しがきびしかった。1960年代までに一部がすでに埋め立てられた後、京葉港2期・市川2期埋め立て計画が1970年代に一度は凍結されたものの、1981年の沼田知事就任とともに同計画が再浮上し、90年に「基本構想」、93年に「基本計画」が策定されたからである。行政は「三番瀬」という名称を一切使わず、「三番瀬」がどこにあるのか知らない市民が少なくないという状態であった。
このような状況において、当会は、三番瀬が東京湾の原風景をとどめ、豊かな生物相を有する干潟・浅海域であることや、埋め立て計画を中止して保全されるべき海域であることを広く訴えるために結成された。
1996年、当会は千葉の干潟を守る会、千葉県野鳥の会とともに「三番瀬を守る署名ネットワーク」を結成し(その後加入団体は増加)、埋め立て計画中止を求める署名活動をすすめた。三番瀬の保全を直接訴え、対話しながら署名をしてもらう活動は、千葉県内だけでなく、数寄屋橋や上野駅前などの都心の繁華街でも行った。郵送による署名も、全国や海外から寄せられた。こうして集まった署名は、1999年に22万筆、最終的には30万筆を超えた。
一方、千葉県は、「千葉県環境会議」の提言により、1996年から3年をかけて三番瀬海域の補足調査を行った。その結果、三番瀬は多様な生物が生息している貴重な海域であるとの報告が発表され、1999年に埋め立て計画の面積を大幅に縮小せざるを得なくなった。しかし環境会議は、縮小案に対してもさらなる計画の精査を促した。この時期、メディアも三番瀬に対する関心を高めていた。
この流れの中で、2001年春の県知事選では三番瀬埋め立てが最大の争点となり、白紙撤回を掲げた堂本暁子氏が当選した。堂本知事は就任後、三番瀬埋め立て計画の白紙撤回を宣言し、翌年1月に「三番瀬再生計画検討会議」(通称・三番瀬円卓会議)を発足させた。会議は2年間の議論を経て「三番瀬再生計画案」を知事に提出した。これを受けて、県は2004年12月、「再生計画(事業計画)案」を提案し、これに基づいて議論、提案をするという形で「三番瀬再生会議」を発足させた。再生会議は、森田現知事(2009年に就任)が2010年末に解散させるまで継続された。
三番瀬を守る署名ネットワークは、堂本知事による「埋め立て計画白紙撤回」表明後の総会において、三番瀬の「ラムサール条約早期登録」推進を県知事と三番瀬周辺の4市長に求める署名活動を行うことを決定し、当会もこれを了承した。この署名活動は現在も継続している。また、当会としては、署名活動のほかに以下の活動を続けてきた。
- 行政への働きかけ
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船橋市長等と面会し、三番瀬保全の必要性を直接訴え
- 会報による広報
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『三番瀬だより』を年間4〜6回発行
- 三番瀬の自然観察
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千葉県野鳥の会等の観察会に参加
- 講演会等の開催
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当会単独または実行委員会に参加し、三番瀬保全に資する講演会、学習会、シンポジウム、コンサート等を開催
- 絵葉書の製作販売
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三番瀬の風景を絵葉書にして販売(完売)
■今後の取り組み
森田知事は今年、「行政が主体的に取り組む」として、三番瀬事業に関する新たな検討組織を立ち上げた。また、その助言組織として「三番瀬専門家会議」を8月に発足させた。これらの組織から「環境団体」は排除された。その意味するところは明らかであると言わざるを得ない。県は、三番瀬埋め立て計画を白紙撤回したあとも、三番瀬の猫実川(ねこざねがわ)河口域を通過せずには建設できないはずの第二東京湾岸道路について「必要」と言い続けた。その意思が、現知事によってより明確な形であらわされたに過ぎないとも考えられる。
1990年代に埋め立て計画中止を求めてさまざまな活動に取り組んだ経験を活かす時である。円卓会議発足(2002年)以降の9年間の議論はすべて公開されたので、そこで蓄積されたものを我々市民は共有している。それは90年代と大きく異なる点であり、ラムサール条約早期登録を求める運動とともにその財産を活用すべきと考える。
(2011年9月)
真冬の三番瀬。海苔(のり)ひびが広がり、多種の鳥が越冬する。
写真は群れ飛ぶハマシギ。三番瀬から西方に目をやると雪を頂い
た富士山が美しい。三番瀬は、一年中生命が躍 動する場であり、
渡り鳥の重要な餌場、漁業者の生活を支える漁場となっている。
三番瀬埋め立て中止を求め、市川市の繁華街でデモ行進=2001年3月
市民500人が三番瀬で手をつなぎ、「人間の鎖」で埋め立て計画撤回を訴えた=1998年11月
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