“ムダな公共事業の象徴”を見る
〜八ッ場ダム見学ツアー〜
(2010年)11月14日、八ッ場ダム見学バスツアーがおこなわれました。主催は船橋市内の労働組合でつくる「船橋労連」(船橋地区労働組合連合会)。参加者は42人です。
◇ダム関連工事、紅葉、温泉 |
八ッ場ダム予定地は初めて見るという人が大多数です。それも、2009年9月の政権交代以降、テレビや新聞が八ッ場ダムをひんぱんにとりあげるようになったので、「現地を実際に見てみたい」と参加した人が大半です。
見学箇所は、吾妻渓谷、ダム関連工事現場、石灰水投入箇所(草津温泉)。昼食は、浅間酒造観光センター(長野原町)の「浅間定食」。最後は、草津温泉の「西の河原露天風呂」に入浴です。今年は紅葉が1週間くらい遅いそうで、吾妻渓谷は紅葉に覆われていました。
◇八ッ場ダムの問題点 |
バスの中では、八ッ場ダムがかかえるさまざまな問題点などを説明しました。
- 首都圏は水余りになっているので、利水面では不要。
- 治水面でも、八ッ場ダムの効果はほとんどない。それよりも、利根川や荒川の堤防補強を優先すべき。
- 代替地などは地滑りの危険性が非常に高い。
- 関連事業や起債の利息も含めると、八ッ場ダムの事業費総額は9000億円近くになり、その負担が首都圏住民や国民に重くのしかかる。
- 八ッ場ダム関連の中和システムとしてつくられた品木ダムには、致死量にして25億人分のヒ素の堆積している。
◇「中止」でも、工事はどんどん進んでいる |
2009年9月、前原誠司前国交相は八ッ場ダムの中止を表明しました。ところが、中止したのは本体工事だけです。ダム完成を前提とした関連工事は継続を了承しました。そのため、現地では、湖面橋(1〜3号橋)の建設や国道・JR吾妻線の付け替え工事などがどんどん進められています。
八ッ場ダムの事業費4600億円のうち、ダム本体工事は7分の1以下の約620億円です。約4000億円は関連工事で、それがどんどん進められているのです。
ダム関連工事現場は長野原町議の牧山明さんに案内してもらいました。牧山さんは、地元住民が驚くような莫大なカネを湯水のように投入してあちこちで関連工事が進められていることや、土砂崩れで工事が伸びたり費用がかさんだりしていることを話してくれました。
◇百聞は一見にしかず |
帰りのバスの中では、参加者からこんな感想が寄せられました。
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「すさまじい自然破壊にショックを受けた」
「八ッ場ダムは“ムダな公共事業の象徴”といわれているが、その実態がよくわかった」
「百聞は一見にしかず。現地を見て、八ッ場ダムは不要であることがよくわかった。テレビや新聞だけでは実態がよくわからない」
「吾妻川に流れ込む湯川の強酸性を中和するために毎年10億円をかけて石灰水を投入していることを初めて知り、衝撃を受けた。こういう事実を周りの人に知らせたい」
「吾妻渓谷など、水没予定地の紅葉はすばらしかった。紅葉だけでもたくさんの人を呼ぶことができる。豊かな自然を活かせば、きっと地域の再建や活性化ができる。ダム建設はやめるべきだ」
「東大卒の官僚や政治家たちにまかせていたら、日本はどんどんダメになっていく。やはり、私たち一人ひとりががんばらなければ、と感じた」
「すばらしい紅葉と温泉(露天風呂)を味わい、しかも、いろいろな勉強をさせてもらった。とても内容の濃い企画だった」
牧山明長野原町議に代替地の整備状況などを説明してもらった
ダム湖にかかる湖面2号橋(不動大橋)。「八ッ場ダム中止」宣言以降に完成した。
湖面2号橋(不動大橋)に続き、湖面3号橋(丸岩大橋)も完成
水没予定地の吾妻渓谷。写真の橋は八ッ場大橋。
水没予定地の吾妻渓谷。写真の橋は滝見橋
写真のコンクリート構築物は、ダムの堤体(本体)を
工事するため吾妻川の水を迂回させるためのもの。
堤体はそのすぐ下流(後方)に計画されている。
滝見橋にて
吾妻渓谷をバックに記念撮影
浅間酒造観光センター(長野原町)で「浅間定食」をご馳走になった
浅間酒造観光センターの展望レストランから長野原・一本松地区の代替地を望む
強酸性の湯川を中和するために石灰水が四六時中投入されている。費用は年間10億円
中和で生じた大量の中和生成物を沈殿させるためにつくられた品木(しなき)ダム。
大型バスが入れないため、今回は見学できなかった。
このダムには、致死量にして25億人分のヒ素が堆積しているといわれている。
湖水は緑白色の不気味な色をしている。沈殿物は毎年2億円をかけて浚渫し、
周辺山林の処分場に埋め立てているが、環境破壊も危惧されている。
処分場はあと10年くらいで満杯になるとのこと。(写真は2008年8月に撮影)
★関連ページ
- 生活再建・地域再生が急務〜シンポ「八ッ場ダムはどうなるのか」(2010/11/21)
- ダム建設の是非を賛成派と反対派が討論〜第二東京弁護士会シンポジウム(2010/7/3)
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