ないものねだりはやめよう
〜リニア中央新幹線計画を問う〜
中山敏則
9月26日、「リニアは必要か?」と題したシンポジウムが山梨県甲府市で開かれました。主催は、リニア中央新幹線計画の見直しを求めている「リニア・市民ネット」。参加者は60人です。
いまもっている宝物を活かすことが大切 〜すぐれた景観や地下資源など〜 |
印象的だったのは、舩木(ふなき)上次氏の話です。
舩木氏は、山梨県北杜(ほくと)市の清里で観光施設「萌木の村」を経営しています。国交省による「観光カリスマ100選」の1人にも選ばれています。「観光カリスマ」というのは、日本の地域観光振興を目的に、特色のある観光地づくりに貢献している人を指します。
舩木氏は、中央アメリカのコスタリカを引き合いに出してこう述べました。
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「山梨県はリニア中央新幹線を欲しがるのではなく、山梨がもっているすぐれた景観や地下資源を大事にし、それを活かすことに力を注ぐべき」
スイスの人たちはリニアを望まない |
舩木氏はこんなことを述べました。
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「リニアに期待している山梨県民に対し、私はこう言いたい。“ちょっと待ってくれよ、山梨県民”と。山梨になにもないのだったら、リニアに期待することもいいだろう。しかし、山梨は、豊かで恵まれた自然や水、美しい風景、すぐれた地下資源をもっている。山に囲まれている点では世界一である。これらが山梨の魅力である。それを大事にしないで、なんでリニアなの? と言いたい」
「山梨がもっているものを大事にするということは、それを侵(おか)すものを持ってはいけないということだ。山梨は、狭いエリアの中にすばらしい景観と水を持っている。このような自分たちの持っている宝物を基本軸にし、どういう価値をもってそこに住むのかということが大事である。そのときに、“リニアは必要なの?”となる」
「たとえばスイスに行ったとき、短時間で旅をする──。そんなことをするのは貧乏人だけだ。金持ちは、船に乗ってゆったりと旅をしているではないか。美しい風景で知られるスイスの旅はバスでゆっくりめぐるのがいい。スイスの人たちはリニアを望まないだろう」
「超特急のリニアを通すよりも、山梨県がもっているすぐれた財産を活かす知恵をだすことのほうがはるかに重要だ。ないものねだりをするのではなく、すでにあるものを大事にし、それを活かす。そういう発想をもたないかぎり、だれがリーダーになっても、山梨県民はコンプレックスをもちつづけることになる。交通の観点でいえば、リニアよりも在来の中央本線を整備したほうが山梨にははるかにメリットがあるはずだ」
以上です。 なるほどと思いました。昨年8月の山梨県経済財政会議でこういうことを発言したら、ずいぶんと反響があったとのことです。
私は、舩木氏の話を聞いたのははじめてです。さすが「観光カリスマ100選」に選ばれるだけのことはあります。実践や実績をふまえての発言を頼もしく感じました。
(2010年9月)
★関連ページ
- リニアの必要性や環境影響などで意見交換〜シンポ「リニアは必要か?」(2010/9/26)
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