■本の紹介

高橋真樹著『自然エネルギー革命をはじめよう』

─地域でつくるみんなの電力─

大月書店/2012年11月刊/1800円





 全国各地における自然エネルギー活用の実例や、それに関わる人々の思いを紹介した本である。といっても、大企業が手がける大型プロジェクトではない。地域に根ざした小さなプロジェクトばかりである。それを自治体や市民が手がけている。具体的には、「北海道グリーンファンド」の市民風車、「おひさま進歩エネルギー株式会社」(飯田市)の太陽光発電などである。

 本書は、自然エネルギーは小規模分散型のシステムで利用することが可能であることを証明している。また、「これまで電力会社などが独占していたエネルギー事業を、地域の市民や中小企業が手にすることで、日本社会の仕組みが劇的に変わる可能性がある」と指摘する。

 この本を読むと、日本でも自然エネルギーの利用が進んでいることを知ることができる。

 それを評価したうえで疑問点を提示したい。それは、自然エネルギーがもたらしている弊害についてはほとんどふれていないことだ。

 たとえば風力発電である。風力発電は全国のあちこちで住民に被害をおよぼしている。騒音や低周波音による健康被害である。また、自然や景観の破壊もすごい。たとえば、東伊豆町の熱川天目山に建設されている風力発電機はその一例だ。そういう弊害をどう克服するのかということについてはふれていない。

 本書は、鳥が風車に衝突する「バードストライク」や低周波騒音について、「マスメディアで作られた風車のイメージ」で「実態を反映していない誤解であることも多い」と一蹴している。これは現状認識が甘いのではないか。たとえば三重県青山高原の風力発電機の近くでは、発電機の稼働によって、野鳥の生息数が繁殖期は4分の1、越冬期は20分の1に減少したとされている(武田恵世『風力発電の不都合な真実』アットワークス)。

 自然エネルギーに関する本をつぎに出版する際は、こうした点もぜひとりあげてほしい。
(中山敏則)












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