行政の主張を代弁する裁判長にア然
〜スーパー堤防事業取り消し裁判の第5回口頭弁論〜
(2013年)1月28日、江戸川区のスーパー堤防事業取り消しを求める住民訴訟の第5回口頭弁論が東京地裁(定塚誠裁判長)で開かれました。スーパー堤防事業に反対する住民73人が傍聴しました。
スーパー堤防と不可分一体の区画整理事業
対象事業の名称は「東京都都市計画事業北小岩一丁目東部土地区画整理事業」です。江戸川区が進めています。しかし、普通の土地区画事業ではありません。国の「高規格堤防事業」(スーパー堤防事業)と不可分一体のものとして進めている計画です。
訴訟は、事業対象区域の住民が起こしました。被告は江戸川区です。
裁判長が江戸川区の主張を代弁
原告(住民)は、国のスーパー堤防計画と一体で進めようとする区の区画整理事業を違法・違憲として計画決定の取り消しを求めています。訴状や準備書面で、「スーパー堤防は不要であるばかりでなく、著しく不合理」ということを、根拠を示して述べています。
この日の口頭弁論では、原告が、スーパー堤防の必要性について被告の反論を求めました。ところが被告は、「区画整理事業とスーパー堤防は、法律上はまったく別個の事業である。したがって、本件区画整理事業の違法性を争う裁判において、スーパー堤防事業の当否は無関係である」と答えました。スーパー堤防事業は本件裁判の争点にならないので反論する必要はない、という主張です。
区は、区画整理事業において、国が盛り土の費用を負担することを「事実上考慮」すると記述しています。原告はこの記述をあげ、区画整理がスーパー堤防事業と一体化した事業であることを認否するよう求めました。ところが、区側は認否を拒否です。
驚くべきことに、原告側の再三の質問に対して、ことごとく裁判長が答えました。「区画整理事業とスーパー堤防事業は別のものというとらえ方もできるのではないか」などと、被告側の主張を擁護する発言を繰り返しました。被告側は「いま、裁判長がおっしゃられたとおりです」と答えるばかりです。
「スーパー堤防を考慮」をやっと認める
原告側は被告側にたいし、こんなことをなんどもただしました。
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「事実の問題として、本件の区画整理事業はスーパー堤防を考慮したものになっている。法律の問題ではなく、事実がそうなっているということだ。それを認めるのかどうか」
また、区側の準備書面では、住民の生命や財産などに「危険が及ぶおそれは考慮しない」と記述されています。この点について、行政としての姿勢をただしました。区側は、「一般的な規範として考慮している」と答えざるをえませんでした。
裁判官の中立性が感じられない
口頭弁論は40分くらいで終了しました。そのあとは参議院議員会館の会議室で報告集会です。国会議員も顔を出してあいさつしました。
集会では、これまでの裁判の経過や争点を弁護団が説明しました。そのあと、住民からこんな意見がだされました。
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「きょうの口頭弁論における裁判長の姿勢はひどかった。被告の江戸川区に代わって裁判長がこまごまと答えていた。裁判官の中立性がまったく感じられない」
弁護団はこう答えました。
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「裁判長の中立性や公平性に大きな問題があるのはたしかだ。裁判長の忌避を申し立てることもできる。しかし、忌避の申し立てが認められたことは、これまでいちどもない。“裁量の範囲内”という判断が返ってくることは明らかだ。そもそも、この裁判を担当している裁判長は、非常に特異な訴訟指揮をとることで有名な人だ。弁護団としては、今後、裁判長の対応の問題を準備書面に書くなど、何らかの工夫をしたい」
政治の状況を反映している
こんな質問もだされました。
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「裁判長が被告(江戸川区)の肩をもつような対応をみせているのは、政治の状況を反映しているのではないか。大型公共事業の促進を掲げる自公政権が復活したということである」
弁護団の答えはこうです。
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「そのとおりだと思う。スーパー堤防事業はムダな事業と判定され、民主党政権のもとでいちど廃止が決まった。だが、自公政権の復活で推進しやすくなった。そこには国交省もからんでいると思われる。裁判官も世論に注目している。国の予算をつけさせないようにするため、がんばりましょう」
次回(第6回)の口頭弁論は4月17日(水)午前11時です。
傍聴券を確保するために裁判所入り口前に並ぶ人たち=1月26日
裁判が終わったあとの報告集会=1月26日
北小岩1丁目東部地区のスーパー堤防事業対象区域。手前は江戸川の堤防
事業予定区域では、あちこちの住宅に反対のノボリ旗が掲げられている
超党派国会議員連盟「公共事業チェック議員の会」と江戸川
スーパー堤防に反対する住民の意見交換会=2009年12月
★関連ページ
- 裁判長交代で新展開〜スーパー堤防事業取消訴裁判の第6回口頭弁論(2013/4/17)
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