海、山、いのち それともお金?

〜全国自然保護連合が講演会〜






 全国自然保護連合は(2012年)12月1日、市川市市民会館で講演会を開きました。


■住環境を破壊する東京外郭環状道路

 はじめに地元の環境保護団体が活動報告をしました。「外環反対連絡会」の高柳俊暢(としのぶ)代表と、「真間山(ままさん)の緑地を守る会」の鈴木一義さん、秋元久枝さんです。
  高柳さんは、「20世紀湾岸開発の遺物『外環道路』」と題し、東京外郭環状道路(外環道)に反対する運動を報告しました。
 外環道の千葉県区間は、市川市10.1キロ、松戸市2キロです。立ち退き戸数は2700戸(市川市2200戸、松戸市500戸)です。市川市では住宅密集地を縦断します。
 高柳さんたちは、1971年以降40年余にわたって反対運動を続けてきました。1971年から1987年までは、住民運動が自治体を動かし、自治体ぐるみの反対運動を展開しました。市川市と松戸市の両市議会と県議会が反対を決議しました。県知事も「外環道路のルートと構造の再検討」を建設大臣に要請しました。
 ところが、東京湾横断道路(現・東京湾アクアライン)の着工決定(1985年)をきっかけにし、外環道工事が再び動き出しました。千葉県議会は、外環道建設促進を自民党単独で決議しました。県と市川・松戸両市も建設推進に変わりました。
 その後、用地買収や工事がどんどん進むようになりました。現時点の進捗(しんちょく)状況は、事業費執行率で57%です。
 外環道は、市川市の歴史ある街並みをズタズタに壊しています。地域も分断です。一方、外環道による交通緩和の効果はたいへん小さいとのことです。
 高柳さんは最後に、「今後も運動を続け、中止とまではいかなくても、引き延ばすことに力をつくしたい」と述べました。


■市川のシンボル・真間山の緑を守るために

 「真間山の緑地を守る会」の鈴木さんは、「真間山を守る裁判闘争」について報告しました。  真間山は、長さ2キロ余にわたってこんもりと繁った森が連なる斜面林です。市川のシンボルともなっています。2001年2月、斜面林の一部(旧木内別邸跡地)をつぶして高層マンションを建設するという計画がもちあがりました。事業者は(株)サンウッド(森ビルの関連会社)です。
 住民は「真間山の緑地を守る会」を結成し、計画撤回を求め、業者との話し合いなどをつづけました。ところが同年11月、市が開発を許可しました。そこで、住民有志35名が開発許可の取り消しを求める裁判を起こしました。
 裁判闘争は千葉地裁、東京高裁と3年半つづきました。しかし、「地区計画は行政処分にあらず」として実質審議に入らず、訴えは却下されました。
 鈴木さんたちは、上告は困難と判断し、2005年7月に裁判継続を断念しました。それ以降、会員アンケートなどにもとづき、周辺緑地を保全するためにさまざまな活動を進めてきました。
 鈴木さんは最後にこう述べました。
     「裁判闘争は、実質審議に入らないまま敗れた。しかし、市の緑地保全の姿勢に一定の影響を与えたと思っている。これからも緑地や斜面林の重要性を訴え、それを後世に引き継ぐために運動をつづけたい」

 秋元久枝さんは、「真間山の緑地を守る会」が進めているさまざまな活動を紹介しました。こんな活動です。
  • 緑地の保全・再生をめざし、ほかの環境団体や千葉大学と協同で「市川市北西部 水と緑の回廊構想」をつくった。それを市川市に提案したら承認されたので、その具体案づくりにとりくんでいる。
  • 四季にわたって自然に親しむため、年に数回、散策会を催している。場所は「水と緑の回廊構想」のコースなどである。会員以外にも広く呼びかけている。
  • 行政の環境施策にも積極的に参加している。自然環境保全再生指針(案)のパブリックコメント(意見募集)に対する意見提出、国府台緑地整備計画のワークショップに参加、市川市総合計画(素案)への意見提出──などである。






話に聞き入る参加者



市川市のシンボルともなっている真間山(ままさん)の斜面林



斜面林にあった旧木内別邸跡。ここをつぶして
高層マンションを建設する計画がもちあがった



JR市川駅前で「真間山を守れ!」の宣伝



開発許可の取り消しを求めて千葉地裁に提訴



水と緑の回廊調査



散策会

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