香川県小豆島・新内海ダム建設を許さない!

環瀬戸内海会議 事務局長 松本宣崇





 ありえねえーっ! 不可思議な新内海ダム計画


 まずは地図を開いて頂きたい。小豆島はその大きさ瀬戸内海第二の島。しかし、新内海(うちのみ)ダムが計画される別当川は、総延長約4qという小河川、渓谷美を誇る国立公園指定第一号寒霞渓(かんかけい)に源流を発する。ダム予定地の川幅は6〜7mほど。そこに堤長447m、堤高42mという巨大な、利水・治水を目的とする多目的ダムを建設するというのだ。奥行きは300m余りにすぎず、計画貯水量108万トンは「四国の水がめ」早明浦(さめうら)ダムのわずか300分の1。しかもダム堤が小高い山をまたぐ、世界にまれな歪なダム計画である。当初予算総額185億円。
 小豆島の水源は1999年の吉田ダム供用開始で水道容量が2.5倍に増加し、それ以来、渇水どころか給水制限も起きていない。
 加えて、香川県が計画の論拠とした1976年の災害(51年災害)の原因は島内各所に発生した土石流である。しかし、別当川本線上流には土石流の発生はなく、下流の洪水対策たりえない。土石流対策と高波対策こそが緊急課題であり、河川洪水対策は堤防の一部かさ上げなど河道整備で充分に対応できる。
 巨大ダムは名勝寒霞渓の景観を損ないこそすれ、小豆島の主要産業・観光に寄与することはない。
 県は地元住民からの再三の老朽化した既存内海ダムの改修・強化の陳情に、全く耳を貸さなかった。ところが吉田ダム完成と前後して、県は1995年の阪神・淡路大震災を理由に、既存ダムの耐震性等の調査への同意を住民に求め、この同意がいつの間にか巨大ダム計画に化け、計画への地元民の疑問の声を封殺し計画を強行してきた。


 香川県、こっそり土地収用申請


 2009年4月17日、香川県と小豆島町を起業者とする新内海ダム予定地の「土地収用適用事業申請書」縦覧の最終日だった。縦覧公告を知らされたのは14日夕方、地権者側弁護士(07年2月、代理人を委任、県庁に通告済み)への連絡であった。2週間の縦覧期間にもかかわらず、地権者も弁護士も知りえたのが、最終日3日前だった。地権者の抵抗権・代理人の弁護権行使の時間的余裕も許さない、ただ「法に則った手続き」の収用申請の強行である。
 もとより土地収用法適用は公権力の発動そのものであり個人の所有権を公権力によって剥奪する行為である。だからこそ、収用法23条に公聴会開催請求権、25条に意見書提出権が明記されている。しかし、「適用事業申請書」はコピーも許されず、県の行為は地権者ひいては県民の権利を著しく制限するものであった。


 迷走する政権


 2009年の劇的な政権交代は、全国のダム計画にとって画期的な出来事であった。内海ダム再開発事業の現場も例外ではない。いやむしろ、野党時代の鳩山由紀夫前総理(当時・党幹事長)が現地を訪れ、「無駄な公共事業の典型」とまで言い放ったダムである。事業見直しへの期待が高まらないはずはない。
 そして、前原大臣による全国143ダムの見直し宣言へと展開。さらに、09年12月12日には、大臣自ら、全国の補助ダムの内唯一、内海ダムの現地視察に訪れ、県知事にダム計画の事業見直しを要請した。県議会による本体工事契約議決の3日前のことであった。
 ところが、香川県知事は要請を拒否し、自民・公明の賛同で強行可決すると同時に、10年8月の任期満了を以て引退を表明。あげく10年2月下旬、国の予算未定のまま本体工事に着手してしまった。
 焦点は、国が補助金(負担金)を出すかどうか。3月12日には該当する長野(浅川ダム)、香川(内海ダム)、熊本(路木ダム)の市民団体連携による申し入れ、大臣への面会要請と続き、25日には三日月国交省政務官との面会にまでこぎ着けた。しかし、前原大臣は翌26日、2010年度予算配分に新内海ダム補助金ほぼ満額を発表してしまった。何がダム事業見直しなのか!!!
 本当に国には補助金(負担金)交付について裁量権がないのか。補助金適正化法を読む限り、例え予算を付けても交付決定を出すかどうかは国の裁量権の範囲としか読めない。


  不当な土地収用・明渡裁決


 しかし、国・県は「法的手続きを粛々と進め」、09年3月には適用事業認定、同7月県収用委員会に収用裁決を申請した。収用委員会はわずかに5回の審理と1回の現地見分だけで審理を終了し、不当にも10年7月20日収用並びに明渡裁決を下してしまった。
 しかも収用裁決を申請した香川県知事・真鍋氏は8月30日の知事選挙には出馬せず、9月には新知事が赴任した。これはまさに「イタチの最後っ屁」か!?


  私たちは強制収用を許さない!


 現場ではこれまでになく緊張が高まっています。9月に入り香川県は不当にもダム本体の基礎工事を強行しました。地権者はじめ反対する私たちは、内海ダムの収用事業認定に対する不服審査請求・事業認定取消訴訟・落合池底地(買収済用地)の所有権移転登記抹消請求訴訟・ダム関連公金支出返還・差止請求訴訟・これらに基づく執行停止申立、そして収用裁決取消請求と、およそ考えられる法的手段を行使しています。
 10年6月には収用対象地に「団結小屋」を建て、島民そして県民に反対の声を訴え理解を求める場を設けました。 予断を許さない状況下、全国からの更なる支援をお願いいたします。新香川県知事に対し、「新内海ダムNO!」「新内海ダム計画、ちょっと待った」の意見を上げて下さい。ご協力をお願いします。

(2010年9月)




  新・香川県知事宛に意見書を寄せて下さい。
 〔意見書送付先〕
   〒760-8570 香川県高松市番町4-1-10香川県庁
           浜田恵造知事







団結小屋




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