新内海ダムをめぐる経過

〜事業認定取り消しと撤去を求める〜


寒霞渓の自然を守る連合会
代表 山西克明






 ここは「二十四の瞳」で有名な香川県の小豆島です。岡山と香川の間に位置するこの島の周囲は150km、人口は3万人弱、高齢化率は38%。島の産業は醤油、佃煮(つくだに)、素麺(そうめん)、オリーブ、石材加工に観光業です。
 日ごろは自然保護運動の皆様にたいへんお世話になり、この際にお礼を申し上げます。


住民は旧ダムの放水口改善を求める

 さて、主題の舞台は東瀬戸内海国立公園に属します。今年は同公園認定80周年記念行事が数多く開かれています。
 昭和33年頃に完成した旧内海ダムは利水が目的でした。貯水量14万トン、堤長約100mで環境に配慮したダムでした。上流に日本三大渓谷の名勝寒霞渓(かんかけい)があり、谷間を流れる全長4kmの別当川(べっとうがわ)の中ほどにあったからです。
 私は今年75歳です。子供の頃は別当川で遊び育ちました。この川で泳ぎを覚えたり、鮎(あゆ)や沢蟹(さわがに)や鰻(うなぎ)などを手掴みで捕らえたりしました。
 昭和36(1978)年9月に集中豪雨があり、旧内海ダムの下流民家は床上床下浸水などの大きな被害を受けました。原因は、ダムの管理人が放水ゲートを閉じたまま出かけたことでした。そのすきに濁流が堰堤天端(てんば)を越えてあふれ出たのです。大被害を蒙った住民は怒り、行政を攻めました。しかし、ほとんど対応がなく、うやむやにされました。住民は長い間、無人でも越水しない放水口の改善を陳情しつづけました。


突然、新内海ダム計画を発表

 その後、平成7年に阪神淡路大震災が起こりました。それを機に、放水口改善の話を国が許可しそうだからと、行政から相談を求められました。住民は長年の夢がかなうかと喜び、改善工事に賛成の意向を示しました。しかし行政は、住民の意向を国に伝えると言いながら、返答がありません。改善の話は消滅したかとあきらめました。
 そうしたら平成10年に突然、「国の計画案はこれだ」と、新内海ダム建設計画が発表されました。貯水量106万トン、堰堤447mの多目的ダムです。この計画を飲まぬと島へ公共工事は未来永劫一切来ない、と脅されました。


新内海ダムは必要ない

 しかし、新内海ダム計画は住民が希望したものとまったく異なります。反対運動が始まりました。一部の者は土地代金をもらって反対運動から脱退しました。けれども、新ダムができる以前に水問題はすでに解決しています。新しいダムをつくる必要はまったくないのです。「新ダムは撤去せよ」と、反対者はいまもがんばっています。
 私たちは2009年12月、新ダムの事業認定取り消しを求めて提訴しました。ところが2010年2月、香川県は係争中にもかかわらず本体工事を強行しました。2013年4月には、試験湛水も終わらないままに「竣工式」を強行しました。
 裁判の口頭弁論では、住民側証人・専門家の証言に対し、被告側はまったく反論しません。この事業に公益性や妥当性がないことは明らかです。


伊予灘地震でダム堰堤に亀裂

「竣工式」強行のあと、新内海ダムの堰堤でひび割れと水漏れが発生しました。去る3月14日、伊予灘を震源とする地震があり、小豆島でも震度4を記録しました。この地震によって、堰堤のひび割れと水漏れがさらに拡大しました。新内海ダムの真下には三つの断層があります。迫り来る「南海トラフ三連動地震」が起きれば、堰堤決壊や山津波の大惨事が危惧(きぐ)されます。ダム直下には3000人が住んでいます。
 私たちは、新内海ダムの事業認定取り消しと撤去を求めています。判決は10月6日です。そこで、公正な判決を求める署名にとりくんでいます。ご協力をよろしくお願いします。
 裁判の住民側証人・専門家の証言で明らかになった新内海ダムの問題点は署名用紙に記載されています。
(2014年6月)








新内海ダムの堰堤からダム湖と寒霞渓(後方の山)を見る



環瀬戸内海会議主催の現地見学会で新内海ダムの問題点などを説明する山西克明さん






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