■本の紹介

富山洋子著『暮らしのなかのボイコット』

─消費者市民としての50年─

現代書館/2000円+税





 著者の富山洋子さんは、日本消費者連盟の役員などとして50年近く消費者運動にかかわってきた。全国自然保護連合の運営委員や事務局もつとめた。

 富山さんはこう書いている。
     「一人ひとりの意志表示としての不買・不払い運動は、国家にも資本にも対峙する『市民的不服従』を体現する『非暴力直接行動』でもあるともいえる。それは、私が旧料金で電気代を払う運動の中で得た実感であるが、暮らしの場からのボイコットは、社会を変えるだけの力を持ち、それはまた、資本のグローバリゼーションを超える躍動をも持ち得ると私は考えている」
 1974年6月、電力会社9社が電気料金の大幅値上げを一斉に申請した。値上げ理由の一つは設備投資の巨額化であった。設備投資は原子力発電所の建設と送電線の敷設に向けられていた。富山さんたちは、原発建設のための電気料金値上げを問題にした。原発は危険であるばかりでなく、エネルギー収支のうえからもひきあわないととらえたからである。

 富山さんたちは値上げ分の不払い運動をおこした。「旧料金で電気代を払う」というものである。電気料金の預金口座からの引き落としをやめて一人ひとりが主体的な支払い者になろう、とよびかけた。「納得できないものは払えない」という、暮らしのなかからの反原発の意志表示である。なによりもいのちが大事である。「悪法もまた法なり」などと泣き寝入りはしない。そのような視点に立ち、非暴力直接行動によって悪法や社会の通念を変えていくことを富山さんたちはめざした。

 2011年3月の福島第一原発事故以降、全国各地で反原発運動がくりひろげられている。しかし、富山さんたちは40年以上も前から暮らしの場で反原発運動をつづけてきた。

 本書は、そうした運動を豊富に、わかりやすく紹介している。上関原発建設を食い止めている運動やリニア中央新幹線計画の問題点などもとりあげている。自然エネルギーの活用事例も紹介している。各地で原発や環境などさまざまな問題にとりくんでいる方々のお役に立つと考える。
(中山敏則)












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