■本の紹介

ジェームス三木著『渡されたバトン』


新日本出版社/2013年4月刊/1238円





 この本は映画「渡されたバトン〜さよなら原発〜」の原作である。原発建設を阻止した新潟県旧巻(まき)町の住民運動を描いている。

 巻町の人たちは創意工夫をこらし、多彩な運動を繰り広げた。原発歓迎の町民世論を原発反対に変えた。自主住民投票もおこなった。そして、ついに巻原発建設計画を白紙撤回させた。

 こんな運動が印象的だ。

(1)ハガキ付き風船飛ばし
     巻原発で事故が起こったら放射能がどこまで飛んでいくのか。それを調べるため、ゴム風船にハガキを入れてたくさん飛ばした。そうしたら、仙台や福島などへ飛んでいき、それらの地からたくさんの返事がきた。
(2)折りづる運動
     巻町は人口3万人の小さな町である。「原発反対」を口に出せない人がたくさんいた。そこで、町民の声なき声を権力側に伝えるため、鶴を折って町長に届けることにした。折りづる運動は、子どもからお年寄りまで、誰もが参加できる。あっという間に3万羽、5万羽と広がった。最終的に13万羽に達した。町役場が保管場所に困るという現象も起きた。
(3)ハンカチ運動
     原発反対のシンボルとして、それぞれの思いを手元のハンカチに書き入れて結びつけるという行動である。巨大な丸太の柱にたくさんのロープが張りめぐらされた。それに結びつけられたハンカチは、いつしか“ハンカチの木”となった。映画「幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ」を彷(ほう)彿(ふつ)とさせる。

 脱原発が強く求められているいま、時宜(じぎ)にかなった本である。また、市民運動(住民運動)の方法論も提起している。どうやれば勝てるのか、ということだ。
 原発建設に反対している人はもちろんのこと、大型公共事業をやめさせる運動などにかかわっている人もぜひ読んでほしい。映画も観てほしいと思う。
(中山敏則)












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