アジアの浅瀬と干潟を守る会
★活動の概要
わたしたちは、汽水域の二枚貝ヤマトシジミ、ハマグリ、アサリを生物指標とした自然保護を中心に活動を行っています。これらは、かつて日本中の河口域で見られた普通種であり、安価だった大衆食材です。しかし今では、ハマグリ(Meretrix Lusoria)は、絶滅が危ぶまれる種となり、食卓に上ることもなくなりました。戦後日本の水環境の劣化は、葦原や干潟をなくしただけではなく、国民に何の断りもなく国家財産であり無限循環資源である天然食材をもなくしてきました。今まで近隣諸国が発展途上にあったために、国内で失われたこれらの食材の代用品を輸入で誤魔化すことができました。近頃では、中国は世界の工場から世界の大消費地へと変貌を遂げ、拡大する消費と反比例して水環境の劣化が深刻な社会問題になっています。
図らずも、日本のアサリ(Ruditapes philippinarum)も絶滅の危機が迫るハマグリと同様の道を辿っていて、事業として成り立つ水域は伊勢湾、三河湾、浜名湖のみとなり、日本のアサリ漁獲高の約7割を賄う三河湾にも、上流に設(し)楽(たら)ダム、河口に三河港の拡張計画があり、心配の種は尽きません。設楽ダムは、国土交通省によるつじつま合わせの再評価手続きが終わる来春にも工事の着工が噂されています。
わたしたちは食の安全保障として、汽水域の二枚貝を東アジア全体で守っていくとともに、水環境の問題を食品産業、観光産業の問題として、或いは一般市民の生活の問題として広く深く認知していただけるような情報発信を心がけています。
★現在の主な取り組み
汽水域の二枚貝を始めとする水産生物は、狭い地域に押しとどめられて、漁業者への金銭補償で最大の環境への影響をないことにしてきたため、環境アセスメントからも除外されてきました。そのため、残された浅海域の漁業は高齢化が進み、日本の水環境の見張り番としての役割を担うであろう後継者も少なく、存亡の危機にあります。
加えて、こうした生産地の危機的状況をよそに、流通部門も少なくなった水産生物に漁獲圧をかけるような姿勢をとってきました。
そこで、日本各地の生産地とスーパーマーケットを始めとする食品流通事業者と、消費者団体で情報を共有することで、「食べ尽くす」から、「環境を食文化として守る」ことへの転換を試みています。社団法人新日本スーパーマーケット協会への賛助会員としての参加や、国際アサリシンポジウムの開催を皮切りに、浅海域の埋め立て・浚渫やダム・河口堰などの河川横断構造物の建設が、食卓で語られるような普通の話題にする取り組みを行っています。情報発信にも工夫を凝らして、You Tube や Facebook、Twitterを活用して差し迫った設楽ダム建設を阻止するべく奮闘しています。
(2011年9月)
★関連ページ
- 日本のアサリがピンチに!〜六条潟を脅かす二つの開発計画(山本茂雄、2011/1)
このページの頭に戻ります
前ページに戻ります
[トップページ] [報告・主張] [動き] [決議・意見書] [全国交流会] [自然通信] [出版物]