■「自然と環境を守る全国交流会」参加団体


小櫃川河口・盤洲干潟を守る連絡会









■盤洲干潟は東京湾に残る大規模自然干潟

 千葉県木更津市の小櫃川河口に広がる盤洲干潟は1400ヘクタールの広大な面積をもつ日本最大級の砂質干潟である。自然海岸の後背地には、43ヘクタールもの塩性湿地帯がある。そこにはヨシが生い茂り、海岸部分はコンクリート護岸もなく、大昔から引き継がれた原風景を留めている日本国内で唯一の大規模自然干潟である。
 小櫃川河口・盤洲干潟で確認された生物は、植物350種、野鳥128種、魚類60種、底生動物40種などである。特にキイロホソゴミムシは、環境省・絶滅危惧T類であり、現在、生息場所は小櫃川河口の限られた場所となっている(1998年、千葉県環境部。本会も2010年生息確認)。また、絶滅危惧U類とされるコアジサシは、東京湾内やその周辺などで繁殖終了後、採食場所として数千羽が盤洲干潟に集結している(千葉自然環境調査会)。その他、多くの渡り鳥にとって欠かすことのできない採食場所である。また、ハママツナ、シオクグをはじめ、保護上重要な植物群落も多い。


■知事へ要請

 昨年12月、私たち連絡会は県庁を訪れて自然保護課の課長・室長と2時間ほど話し合い、小櫃川河口・盤洲干潟を早急に千葉県自然環境保全地域に指定することを求めた。その内容は次のとおりである。
    《当会は、2001年、14団体により設立以来、数度にわたり保全要請をしてきた。(中略)
     近年、当会主催による盤洲干潟自然観察会のほか、周辺自治体・公民館、博物館主催による大人や子供向けの盤洲干潟観察会も増加しており、その保全への関心は大きな高まりを見せている。
     昨年10月、環境省はこの盤洲干潟をラムサール条約登録に相応しい湿地167カ所のうちの1カ所に挙げた。これほどの自然度を有するにもかかわらず、現状では小櫃川河口域を含む盤洲干潟については法的開発規制が全く無い状態である。後世に残したい日本の宝ともいうべき盤洲干潟が、東京湾・千葉県に存在するという事実を内外にアピールするという意味においても、千葉県自然環境保全地域として指定することを要請する。》


■「自然保護課も努力している」

 当日、課長は次のように発言した。
     「自然保護課としても三角州の部分について保全地域指定したいと努力している。年度内にも漁協へ話し合いに出向く予定だ。他の漁協は理解してくれそうだが、金田漁協の理解がなかなか得られない。それは、浸透実験池(通称:丸池)周辺に生息しているカモ類が養殖の稚貝を食う、また、カワウが『簀立て漁』の魚を食って困るとのことだが、実際はどのような状態なのか、調査がなかなか困難である」
 また、本年1月の文書回答では、「小櫃川河口三角州は千葉県所管であるが、干潟部分は国であるので何ともいえない」と記している。
 これらのことがネックとなり、保全地域指定は10年以上も足踏み状態である。「カワウが簀立(すだ)ての魚を食う」ということについても、漁協関係者に聞くと、「1匹や2匹は食うかも知れないが全く影響ない」とのことであった。


■日本湿地ネットが総会・シンポを開催

 本年5月、盤洲干潟のある木更津市内で、日本湿地ネットワークの総会・シンポが「日本の湿地を守ろう!」をスローガンとして開催された(詳細は日本湿地ネットのホームページを参照)。その前日の盤洲干潟観察会では、全国の干潟・湿地保全に携わる地域の代表者たちから、その自然度の高さに「ここがラムサール条約湿地でないのは不思議だ」などと称賛の声頻(しき)りであった。


■自然環境保全の方向へ

 現在、盤洲干潟の隣接地で温泉とホテルが操業している。この建設計画が持ち上がった十数年前、木更津市が漁協と自然保護団体の話し合いを開いた。その席上、金田漁協組合長がこんな発言をした。「本音を言うと、我々漁協組合員は高齢化が進んでいるので、開発がらみの補償金をもらって生活したい。保全地域に指定されると補償金が出なくなってしまう」と。この言葉が今も耳にこびりついている。  しかし、これ以上漁業権と引き替えに補償金としての税金を費やすのは時代錯誤である。私たちの要請は、漁業権を奪うのではなく、自然を守り、漁業を守るはずの自然環境保全策としての地域指定なのだから。  これからも千葉県に対し、小櫃川河口の三角州を「自然環境保全地域指定」とすることを繰り返し要請し、さらには盤洲干潟を含めて周辺一帯をラムサール条約湿地とする運動を進める。
(2011年9月)


《参考ウェブサイト》
 http://www.boso.shizen2.jp/banzu.htm







地球上でここだけに生息するキイロホソゴミムシ



広大な塩性湿地



干潟の自然観察会






★関連ページ

このページの頭に戻ります
前ページに戻ります

[トップページ]  [報告・主張] [動き] [決議・意見書] [全国交流会] [自然通信] [出版物]