全国自然保護連合の決議文


 三番瀬「再生事業」に異議を唱え、

 海域保存とラムサール条約早期登録を求める決議






  三番瀬「再生事業」に異議を唱え、
  海域保存とラムサール条約早期登録を求める決議


 東京湾三番瀬(さんばんぜ)が危機に直面している。三番瀬は、東京湾の奥部に残る貴重な干潟・浅瀬である。一部は埋め立てられてしまったが、さらなる埋め立て計画はねばり強い自然保護運動により白紙撤回になった。2001年の県知事選挙で三番瀬埋め立てが最大の争点になり、白紙撤回を公約にかかげた堂本暁子氏が当選して撤回したからである。

 堂本知事は、新たな三番瀬計画を策定するため、「三番瀬再生計画検討会議」(通称・円卓会議)を2002年1月に発足させた。円卓会議は2年間続けられ、今年(2004年)1月、「三番瀬再生計画案」をまとめて知事に提出した。再生計画案には、「三番瀬の自然再生のための具体的施策」として、「市川市塩浜2丁目の改修護岸前面における干出域の形成」が盛り込まれた。これは、塩浜2丁目の護岸改修とあわせて浅海域(浅瀬)に土砂を投入し、「干出域の形成」、つまり人工砂浜を造成するというものである。

 この海域には、ハゼなどの稚魚やカニなど、多様な生き物が生息している。そこに土砂を投入して人工砂浜をつくれば、生き物は全滅する。浄化能力も格段に落ちる。三番瀬全体の生態系にも大きな影響をあたえる。したがって、パブリックコメント(意見公募)では、全国自然保護連合や三番瀬保全団体など、多くの環境団体や市民らが反対の意見を寄せた。しかし、円卓会議は、これらの意見を無視し、土砂投入などを再生計画案に盛り込んだ。

 県は、この護岸改修と土砂投入を「三番瀬再生」の先発事業(最優先事業)として位置づけ、すぐに調査をはじめることを決めた。しかし、先月26日に開かれた「三番瀬再生事業の調査説明会」では、参加者から、「護岸改修を真っ先に実施するのはおかしい。まず、三番瀬再生事業の全体を検討べきだ」「三番瀬再生会議をすぐに立ち上げ、そこで論議すべきだ」「円卓会議の議論では、“これ以上海を狭めない”が大前提になっており、海域には構造物をつくらないことになっていたはず」などの異論が噴出した。しかし県は、「説明会で市民の理解が得られた」とし、強引に調査をはじめることにしている。

 多様な生き物が生息する浅海域(浅瀬)に石積み傾斜護岸をつくったり、土砂を投入して人工砂浜を造成することは、自然を破壊するものである。東京湾の干潟・浅瀬が9割も埋め立てられてしまったなかで、三番瀬はこれ以上つぶすべきでない。現実に存在する生態系をつぶして疑似自然を造成することは許されない。
 こうした視点から、私たちは以下のことを求める。
  1. 三番瀬円卓会議の後継組織である「三番瀬再生会議」を直ちに発足させ、そこで三番瀬再生事業の内容を議論すべきである。「再生会議」を発足しないうちに護岸改修事業などを先行的に実施することは許されない。たとえ、調査であっても同様である。
  2. 市川塩浜地区の海岸保全区域については、海に張り出さないように設定することが円卓会議で合意された。しかし、県は今年6月、ひそかに、海に20〜23メートル張り出す形で同区域を設定した。これは、円卓会議の合意事項を無視するものである。したがって、海岸保全区域設定の撤回を強く求める。
  3. 多様な生き物が生息する浅海域をつぶして石積み護岸をつくったり、人工砂浜を造成することは、従来型の土木工事であり、三番瀬の自然再生とは無関係である。三番瀬の生態系にも悪影響をあたえることが確実である。三番瀬で求められているのは、そんな工事ではなく、わずかに残された貴重な干潟や浅瀬を保存することを基本にし、保全を強化することである。海域をこれ以上狭めたりつぶすことは許されない。
  4. 三番瀬保全で重要なことは、ラムサール条約の登録湿地にすることである。三番瀬は、環境省が選定したラムサール条約登録湿地の有力候補地にあげられている。したがって、2005年の「ラムサール条約締約国会議」に向けて登録手続きを急ぐべきである。

以上決議する


 2004年11月6日

全国自然保護連合





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