全国自然保護連合の決議文


新石垣空港カラ岳陸上案の凍結を求める決議





  新石垣空港カラ岳陸上案の凍結と建設位置選定の
  やり直しを求める決議

 当連合は、新石垣空港建設位置選定委員会が沖縄県から提示された4候補地を審議していた2000年2月、「カラ岳陸上案は、陸・海一体となった世界的に貴重な白保サンゴ礁生態系に回復不能な重大な影響を与える恐れが極めて高い」として、総会で同案に反対する決議を採択した。また同年10月には第25回全国自然保護連合蓼科大会(長野)の大会決議としてあらためて反対の意思を明らかにし、沖縄県に新石垣空港建設計画の白紙撤回を求めた。

 当連合は、今回の総会で同計画について再検討した結果、カラ岳陸上案の決定過程そのものに重大な瑕疵があり、新規事業採択時に求められる候補地選定の十分な吟味(国土交通省航空分科会の提言)が適正に行われたとは到底言えないと結論づけた。
 したがって沖縄県はまもなく予定している環境影響評価方法書の縦覧などを含めてカラ岳陸上案にかかる作業を全面的に凍結し、これまでの経緯を総括して地元代表と環境保護団体の代表などを公平に配置した円卓会議等を設置して、位置選定の協議をあらためてやり直すよう求める。

  1.  位置選定委員会の委員構成が適正でなかった。環境を重要な課題としながら36人の委員のうち環境問題の専門的見識のある委員は、学識委員を含めてわずか3人。学識委員(8人)と保護団体の委員(2人)を除けば残りはすべて地元の政治、行政、経済、および地域の代表であった。

  2.  沖縄県は学識委員や保護団体などからの「カラ岳陸上案の環境調査(アセス)をしてから4候補地の比較検討をするべき」という意見や再三の強い要請を「時間がかかる。位置決定してから調査する」などとして受け入れず、結局、環境データの全くないカラ岳陸上案を建設地に決定した。はたして、後からの調査で予定地内外に絶滅危ぐ種のコウモリの繁殖や115種もの希少な動植物の生息が明らかになった。選定前にこの事実が分かっていれば、その結果が変わっていたことは十分に予想できる。

  3.  選定委員会で沖縄県が提示した4案の中には、保護団体などが提案していた、建設案は入れられておらず、比較検討の対象にさえなっていない。

  4.  選定委員会で最後までカラ岳陸上案に反対する委員に対して、多数の委員から寄ってたかって執拗なまでの賛成への強要が行われた。カラ岳陸上案は民主的な合意形成によって選定されたとは到底思えない。

  5.  このほか、沖縄県自身が「延長は考えていない」としながら「将来の延長の可能性」が重要課題として審議されたり、県の作成したカラ岳陸上案のデータに貴重種として当然記載されなければならない特別天然記念物のカンムリワシが抜けていたりなど、選定委員会の審議とその内容については透明性、科学性、公平性、民主性などの点において多くの問題がある。

  6.  沖縄県は地元調整会議で微調整をしたうえ、最終的な位置を確定したあとも、ターミナル部分の陸側から海側への移転を、いとも簡単に行っている。これは白保の条件賛成派からの要求を受け入れたものだが、この変更によって空港の位置がさらに海に近づくだけでなく、土工量も増え、盛土と切土のバランスも極めて悪くなり、環境への影響が明らかに増大する。このような変更は環境影響の低減を求めている環境影響評価法を軽視するものにほかならず、地元の利害調整や利権調整を優先し環境保全は二の次にして建設地の選定にあたってきた沖縄県の姿勢を如実に示している。

 2002年9月29日


全国自然保護連合




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