2003年12月13日
三番瀬再生計画検討会議
会長 岡島成行 様
全国自然保護連合
代表 青木敬介
三番瀬再生計画素案に対する意見
私たち全国自然保護連合は、全国で自然保護運動に携わっている市民団体が連合して1971年に結成されました。
さて、三番瀬再生計画素案について下記のとおり意見を述べさせていただきます。
記
「第四章 提言」の「三番瀬の自然再生のための具体的施策」に書かれている「市川市塩浜2丁目の改修護岸前面の干出域化」(156ページ)は削除してください。また、市川市塩浜2、3丁目の護岸イメージ図(107、109ページ)を見直し、海域への張り出しや土砂投入をしないものに差し替えてください。
〈理由〉
- 海域に大きく張り出して石積み傾斜堤をつくり、その前面に「干出域」(砂浜)をつくることは、事実上の埋め立てです。
三番瀬は東京湾奥部に残された貴重な干潟・浅瀬です。東京湾の干潟・浅瀬が9割も消失したいま、大切な海域をこれ以上つぶすことはやめるべきです。
- 素案は総論部分で、「三番瀬などわずかに残された東京湾のすべての干潟・浅海域をこれ以上狭めることなく保全し、漁業と一体になった生態系を安定して維持する」(77ページ)とか、「海域をこれ以上狭めないことを原則として三番瀬の再生を実施する」(87ページ)と書いています。
こうした考え方はたいへんすぐれたものです。しかし、総論ではこのように書いているのに、「提言」(結論部分)ではそれと反対のことを打ちだしているのです。これは納得できません。
- 市川塩浜2丁目護岸前の海域はハゼの巣穴がたくさんあるといわれています。じっさいに、ここの護岸はハゼ釣りやカニ釣りのメッカとなっていて、ハゼ釣り客は土砂投入などに強く反対しています。
また、素案にははっきり書かれていませんが、この「石積み傾斜堤+干出域」を提案した磯部雅彦委員は、それが猫実川河口域(三番瀬の市川側海域)の大規模な人工干潟化を目標にしていることを円卓会議で何度も強調しています。この海域はベストな環境ではないので、もっといい環境にするために人工干潟をつくることが必要である。しかし、いっぺんに浅くすると三番瀬の環境に影響がでるので、塩浜2丁目護岸の前に土砂を入れ、その土砂が波の力などで侵食されて三番瀬に広がっていくようにする──というものです。
しかしながら、猫実川河口域は東京湾奥部で奇跡的に残された浅瀬(浅海域)です。稚魚や、魚のエサとなるアミ類などがたくさん泳ぎ回っています。アナジャコも無数に生息しており、高い水質浄化能力を誇っています。このことは、市民団体が継続的に実施している市民調査などで明らかにされています。また、素案も、「三番瀬の現状」のなかでこの海域について、「汽水性泥質干潟生物や泥質域に適応したアナジャコなどの生物が高い密度で生息している唯一の場所」であり、「三番瀬の生物多様性の保全において特に重要な場所」(33ページ)と書いています。
三番瀬の生態系は、多様な環境と生物、漁業などの人間活動が微妙なバランスを保ちながら成りたっています。海域の一部をつぶし、そこに土砂を大量に投入することは、三番瀬の生態系を破壊することになります。道を誤ってはいけません。
生き物が豊富で水質浄化能力も高い湿地を人工的に改変するというのは時代錯誤であり、絶対に避けるべきです。「自然は人間が勝手に考えるほどたやすくは改造できない」(レイチェル・カーソン)ということを肝に銘じてください。
- 三番瀬はいま、数十年ぶりのアサリの豊漁にわいています。有明海(九州)などにアサリを移出し、「日本全国のアサリ資源を三番瀬が担っているといっても過言ではない」(第18回円卓会議での大野一敏委員の発言)とまで言われています。
三番瀬はそれほど自然の豊かさを維持しているのです。いまはアサリ豊漁の原因分析など現状調査をしっかりやることが必要であり、急いで土砂投入などをやるべきではありません。
以上
■参考ページ
- 三番瀬再生計画素案(千葉県庁ホームページ)
- 三番瀬再生計画素案に対する意見書を共同提出〜37団体が賛同(2003/12/18)
- 三番瀬再生計画素案の問題点(千葉県自然保護連合事務局)
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