「自然再生推進法案」についての意見書
公共事業などによって破壊された自然を第2の「公共事業」によって再生しようという問題の多い法案が、次の国会で成立しそうな状況にある。
自然再生推進法案は先の通常国会に与党3党の議員立法として提出され、一時は成立すると言われていたが、一部自然保護団体の申し入れや民生党の修正案などが出て、秋の臨時国会にもちこされた。
この法案には以下のような重大な欠陥がある。
- 「自然再生」という美しいことばを使うが、「再生」すべき自然とはどのようなものかという理念がまったく無い。
- 55年にわたって本当の自然を破壊してきた反省と、破壊の結果についての分析もなく、最もその破壊にかかわった省庁が主管省になっている。
- 各部道府県知事が招集する「自然再生協議会」の構成員に学識経験者やNPOのメンバーを加えるという、一見民主的な形をとっているが、どのような人物を選ぶかが知事の見解にゆだねられていることは、その協議会の内容が恣意的にゆがめられる恐れがある。また、そのような協議会で「これは自然再生事業である」と宣言すれば、どのような自然破壊事業でも「自然再生」になってしまう。しかも、事業(工事)主体も明確でない。
これまでの公共事業による自然破壊の反省もなくこの法案を制定することは、単に新たな公共事業を増やし、自然環境破壊の上ぬりをすることになる。
自然を再生したいと本気で考えるなら、まず沖縄辺野古沖の空港や泡瀬干潟、川辺川ダム、八ッ場ダムの建設、そして諫早干拓工事などをただちにやめるべきだ。
この際、拙速に、このような不備な法案の成立を急がず、全国的に現地で環境保全に努力している住民団体の意見を集め、本当に自然環境が回復できる内容を持った法案を、時間をかけて練りあげるべきである。
2002年9月29日
全国自然保護連合
代表 青木敬介
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