暮らしの中で憲法を活かそう

〜日本消費者連盟などがシンポジウム〜







 日本消費者連盟(日消連)と消費者・生活者9条の会は6月18日、「暮らしの中で憲法を活かそう」と題したシンポジウムを都内で開きました。両団体は『孤立し漂流する社会を生きる私〜市民がつくる“憲活”レポート〜』(七つ森書館)を6月に出版しました。シンポジウムは本書出版の記念イベントとして開かれました。
 最初に、「明日の自由を守る若手弁護士の会」の太田伊早子さんが基調講演をしました。講演のあとは「あたりまえの暮らしをとりもどす」をテーマにパネル討論です。本書の編集に加わったり取材に協力したりした方々がパネリストになり、意見をかわしました。杉浦陽子さん(日消連編集委員、『消費者リポート』編集)、佐藤眞美さん(「生業を返せ!地域を返せ! 福島原発訴訟」原告)、茂木遊さん(企業組合あうん)です。講師の太田伊早子さんもパネリストに加わりました。



「あたりまえの暮らしをとりもどす」について語り合うパネリストの人たち。左から
纐纈美千世さん(司会)、杉浦陽子さん、佐藤眞美さん、太田伊早子さん、茂木遊さん





講演要旨




憲法は自由と平等を守るための法だ!

明日の自由を守る若手弁護士の会 太田伊早子さん


 安保法制が成立した昨年は憲法にとって大きな1年だった。今年は憲法にとってもっと大きな1年になることが予想される。安全保障や個人の尊厳・自由、国家観などをどのように考えるのかということを一人ひとりが問われる1年になる。
 そのような問題を自分はどのように考え、どんな選択するのか。そのためには、なにが問題になっているのか、憲法はどういうものであるのか、ということを実感として知る必要がある。


憲法の核心は個人の尊厳

 「憲法をいちばんよくあらわしている条文はどれですか」と聞くと、たいていの人は「第13条」と答える。13条には「すべて国民は、個人として尊重される」と書いてある。さりげない条文である。だが、この言葉が憲法の核心を非常によくついている。個人の尊厳ということが憲法のいちばんの理念になる。
 どんな人であれ、生まれながらしにして尊厳をもった特別な個人である。憲法はそのようにうたっている。
 といっても、「すべて国民は、個人として尊重される」とただ言うだけでは意味がない。憲法は、人が個人として尊厳をもって生きていくためにはさまざまな自由(権利)が保障されなければならないし、ほかの人と平等にとりあつかわれる必要がある、と記している。思想および良心の自由(19条)、集会・結社・表現の自由(21条)、信教の自由(20条)、職業選択の自由(22条第1項)などである。このようにさまざまな自由を保障している。いろいろな自由が保障されないと自分らしく生きていくことができないからだ。


憲法は権力の濫用を防止する法

 憲法はまた、そのような自由と平等を国家権力は守らなければならない、とうたっている。
 国家権力はその権力を濫用しがちである。これは歴史的経験がしめしている。そういう国家権力をしばる必要がある。99条にはこう書いてある。「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」
 ここに書かれているのは、いずれも権力者側や公務員側である。一般国民は入っていない。憲法を守らなければならないのは一般の国民ではなく権力者側ということだ。これが憲法の特徴である。
 つまり、憲法は国家権力の濫用を防止するための法ということである。それによって個人の自由を保障するというところに目的がある。
 一般国民には自由を、権力のほうに規制を──。これが憲法の考え方となっている。そして、「この憲法は国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔(しよう)勅(ちよく)及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」(98条第1項)と明記されている。


自民党改憲草案の問題点

 今年7月の参議院選挙のいちばんの争点は憲法改正である。もし参議院で改憲勢力が3分の2を確保したら憲法改正が予想される。
 現憲法の13条は「すべて国民は、個人として尊重される」と書いている。これにたいし、自民党の改憲草案(日本国憲法改正草案)は「全て国民は、人として尊重される」と書いていて、「個人」を消している。これは重要な意味がある。“一人ひとりが尊重される”を否定しているということだ。同じ13条の「公共の福祉に反しない限り」も「公益及び公の秩序に反しない限り」に変更されている。これも大きな違いだ。人権が人権以外のものによって制約されるということである。
 21条(集会・結社・表現の自由)も、自民党改憲草案では「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社することは、認められない」という記述が追加されている。いままでにない制約をするということだ。これによって、私たちがいま開いている集会はできなくなる可能性もでてくる。







太田伊早子弁護士の講演に聞き入る参加者



「明日の自由を守る若手弁護士の会」の太田伊早子さん



新刊『孤立し漂流する社会を生きる私』の編集に参加した杉浦陽子さん



「生業を返せ!地域を返せ! 福島原発訴訟」原告の佐藤眞美さん



企業組合あうんの茂木遊さん






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