水道水源地に放射性廃棄物を埋め立て

〜千葉県君津市の産廃処分場を見学〜







 (2011年)12月12日、放射性廃棄物が次々と埋め立てられている君津市の産廃処分場を見学しました。君津市怒田(ぬだ)にある「君津環境整備センター」です。見学会を主催したのは、全国自然保護連合と「自然と環境を守る全国交流会」です。


■数十万人の水道水源地

 処分場はJR君津駅から車で1時間のところにあります。御腹川(おはらがわ)の最上流部に位置する山奥の谷間です。
 御腹川は小櫃川(おびつがわ)の支流です。小櫃川は、市原、袖ケ浦、木更津、君津、富津、千葉市の数十万人の水道水源です。数十万人が利用している飲み水の水源地に放射性廃棄物が次々と埋め立てられていることになります。
 そのため、流域住民は「放射性物質から生命(いのち)を守る市民の会」を11月8日に結成し、放射性廃棄物の持ち込みを中止させる運動をはじめました。搬入中止を求めるチラシと署名を新聞に折り込んだら大反響がまきおこり、署名が続々と届いているそうです。


■搬入量の半分以上は放射性汚染物

 処分場ではまず、廃棄物処分システムの概要をビデオで見せてもらったあと質疑応答です。そのあと現場を見学しました。
 処分場は、福島原発事故が起きた3月11日の直後から放射能廃棄物を次々と受けいれています。最近は、放射性セシウムに汚染された汚泥や焼却灰の受け入れが搬入量の半分以上を占めています。たとえば、この日の搬入量はダンプ30台で、そのうち21台は放射性廃棄物とのことです。
 ところが、行政と処分場運営会社は、放射性廃棄物の搬入をひた隠しにしました。わかったのは7月です。


■遮水シートの耐用年数は不明

 質疑応答と現場見学で明らかになったのは、放射性廃棄物を扱うための特別な対策は講じていないことです。産廃処分の技術と設備をそのまま使って放射性廃棄物を埋め立てています。
 埋め立て地の底に敷いてある遮水シートは普通の産廃用のもので、耐用年数は不明です。遮水シートは、産廃に含まれる化学物質によっても劣化したり破れることがあります。
 処分場の浸出水と放流水は御腹川に流れ込んでいます。大雨が降れば処分場中の水があふれ、セシウムが御腹川に流出する可能性もあります。
 大地震による崩落も想定していないとのことです。


■作業員の被曝対策は

 7月以降、場内従業員と運転手は線量計を携帯することになりました。また、場内作業員はマスクとゴム手袋をすることになりました。
 重要なのは、自治体が被曝防止策をきちんと指導していないことです。線量計の携帯やマスク・ゴム手袋の装着は会社が自主的に指示したとのことです。


■6月までは8000ベクレル/kg超も埋め立て

 さらに重要だと思うのは、福島原発事故の発生直後から6月までは、8000ベクレル/kgを超える汚泥や焼却灰も受け入れていたことです。「8000ベクレル/kgを超えるものは受け入れられない」となったのは6月になってからです。


■危機意識はゼロ

 ようするに、行政の対策はいい加減です。また、放射性廃棄物を受けいれている処分場も、特別な対策は講じていません。
 数十万人の貴重な水道水源(御腹川)に、処分場から浸出水と放流水が常時流れ込んでいます。処分場は月に1回、御腹川に放流する水の水質を測定しています。しかし、月に1回では少なすぎます。
 いったん放射性セシウムが御腹川に流れ込んだり、地下水に浸透したらアウトです。処分場から1.5km離れた福野地区では地下水を飲み水として利用しています。
 そんな危機感が、処分場からも、そして行政からもまったく感じられません。恐ろしいことです。

 現場と見学したあとは、君津市の小糸公民館で「市民の会」の役員から話を聞いたり、意見交換をしました。「放射性廃棄物は、原因者の東電に引き取らせるしかない」などを話しあいました。



君津地域の放射性廃棄物埋め立て地





君津環境整備センター=新井総合施設(株)のホームページより



放射性廃棄物の埋め立て地



2期埋め立て予定地



調整池。堰(写真奥)の先は御腹川



説明を聞く参加者



「放射性物質から生命を守る市民の会」と交流会



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