日本湿地ネット(JAWAN)の存続が決まる

〜総会で存続案を採択〜





「日本湿地ネットワーク」(JAWAN=ジャワン)の総会が2009年2月22日に東京都内で開かれ、JAWANを存続させることが決まりました。


◆存続案に賛成78、反対32

 総会は、1月10日に開かれた運営委員会で存続か否かを総会にはかることが多数決で決まったため、開かれたものです。
 総会には2つの案が提案されました。
     A案……JAWANはラムネット後継組織に合流する
     B案……JAWANは解散せず、今後も存続させる
「ラムネット後継組織」というのは、昨年3月にJAWANがよびかけて設立した「ラムサールCOP10のための日本NGOネットワーク」(略称:ラムネット)の後継組織です。この4月に発足する予定です。
 ちなみに、「ラムサールCOP10」は、昨年秋に韓国で開かれた第10回ラムサール条約締約国会議のことです。

 採択の結果は次のとおりです。
     A案……賛成30、反対80、棄権2
     B案……賛成78、反対32、棄権2
 この結果、存続が決まりました。


◆JAWANの存在意義は消失していない

 討論では、設立時からJAWANの活動にかかわっている辻淳夫さん(JAWAN共同代表、NPO法人藤前干潟を守る会代表)や大浜清さん(千葉の干潟を守る会代表)、木村真介さん(内川と内川河口をよみがえらせる会会長)などが存続を強く訴えました。

 私も存続案を支持する立場から発言しました。以下は、私の発言内容です。
    《私は、「B案」の「JAWANはJAWANで活動する」を支持します。理由は、JAWANの存在意義はけっして消失していないと考えるからです。
     たとえば三番瀬です。三番瀬は2001年に埋め立て計画がいったん白紙撤回されました。しかし、埋め立ての第一の目的である第二湾岸道路計画は今も生きていて、三番瀬は相変わらず開発の危機にさらされています。
     三番瀬の埋め立て反対運動は、JAWANに大きな支援を受けてきました。そうした支援が今後も必要なので、ぜひJAWANはJAWANとして存続させてほしいと訴えます。
     私は、ラムネットの後継組織を発展させることにはまったく異議ありません。ラムネット後継組織で奮闘したい方はどんどんやっていただきたいと思います。
     しかし、JAWANは残し、これまでと同様に、JAWANがラムネット後継組織の活動に協力すればいいと思います。
    「A案」はJAWANの解散あるいは解体と同じです。ラムネット後継組織に「合流」するというのは、ほかの団体といっしょにJAWANをラムネット後継組織に再編統合するということです。そうなれば、いまのJAWANはなくなります。
     要するに、JAWANをラムネット後継組織に統合したい人からみれば「合流」でしょうが、JAWANの存続を願っている人からみれば、解散ということになるのです。
    「A案」を提起されている方は、「本質的な解散ではない」と言いますが、それは言葉のマジックにすぎません。
     昨年10月下旬に韓国で開かれたラムサール締約国会議では、「A案」支持者と「B案」支持者がいっしょに参加し、さまざまなとりくみを仲良く進めています。
     それが11月下旬に突然、紛糾状態になってしまいました。それは、「A案」を提起する人たちがラムネット後継組織への合流を突然提起し、それを急いで決めようとしたからです。最初は、総会も開かず、運営委員会だけで決めようとしました。
     結果的に総会が開かれることになりました。しかし、あまりにも拙速すぎです。
    「合流」とか「解消」という大事な問題を短期間で決めようとすれば、「混乱」や「紛糾」がおきるのは当たり前です。
     JAWANはJAWANとしてぜひ残してください。そして、JAWANとラムネット後継組織が連携して運動を進めていけるようにほしいと思います。》


◆背景にあるもの

 JAWANは、全国自然保護連合第4回大会の干潟分科会の議論から生まれました。山下弘文さん(諫早干潟緊急救済本部、故人)や辻淳夫さん(藤前干潟を守る会)など、分科会の出席者が呼びかけ人となり、1991年に設立されたのです。そのいきさつなどは、山下さんと辻さんが全国自然保護連合編『自然保護事典A〔海〕』(緑風出版)にくわしく書いています。

 JAWANは設立以来、全国の干潟保存運動に多大な貢献をしてきました。そんなJAWANは、行政や企業と一定の距離をおいてきました。
 しかし、ラムネット後継組織は、スタンスがJAWANとかなり違うものになりそうです。というのは、「A案」の提起者たちが総会で配布した資料をみると、有力企業からの「経済的支援」獲得や農水省・国交省との「タイアップ」(連携)も視野にいれているからです。
 じっさいに、「ラムネット後継組織のイメージ」では、「会員構成」に「企業賛助会員(年会費10万円) 15社目標 150万円」も盛り込まれています。

 全国各地の市民団体をみると、行政との「協働」(パートナーシップ)や、行政や企業からの資金援助を指向する団体が急増しています。ラムネット後継組織へのJAWANの「合流」(=取り込み)をめざす、強引ともいえる主張の背景にも、そういうことがあったのかもれません。


◆原点に戻り、湿地保全運動の連携強化を

 ともあれ、JAWANは解散の危機を脱しました。「ラムネット後継組織へ合流」を主張していた運営委員は、多くが辞任しました。
 辻代表や伊藤昌尚事務局長など、残った運営委員は、3月14日の運営委員会で「JAWANの原点にたちかえって全国各地の湿地保全運動の連携を強める」ことを確認しました。そして、秋に全国湿地シンポジウムと総会を開き、運営体制を再構築することなどを決めました。
(2009年3月、文責:中山敏則)




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