■八ッ場ダムを止めよう!首都圏集会


会場からの発言






●全国市民オンブズマン連絡会議

 先ほど久慈さんから話のあった住民訴訟の件は検討中である。  昨年から今年にかけて、千葉、東京などで住民監査請求がされた。その後住民訴訟が起こると思っていたが、やってくれる弁護士が見当らないということで、どこも住民訴訟が起きていない。それならオンブズマンが弁護士のネットワークを通じて市民に対応していくべきじやないかということを考えつつある、という段階である。
 逆に、どれだけ市民の盛り上がりがあるのか、不安もある。弁護士がいないから住民訴訟ができないという言い方も、ちょっとストレートには受け取れない。
 訴訟は弁護士がやるものではない。本人が訴訟を起こして、これはちょっと難しいので弁護士さん手伝ってくれ、というのが筋だ。弁護士がいないから住民訴訟ができないという人は、弁護士に任せたから後は知りませんよ、という人たちではないか。そういう不安があるので、私どもからぜひやりたいということを意思表示するのは控えている。
 少し時間をかけても、住民訴訟まで視野に入れたとりくみを考える体制がとれるのであれば、タイアップする形で、私どもも体制を考えていきたい。住民訴訟というのは、1回の請願や陳情と違って、法廷という場に相手を引きずり出しての長い闘いだ。国交省も利害関係人として参加してくる。もし1都5県で同時進行的に、お互い交流しながらやれば、そういう意味では面白いと思う。  ただ、一方では、限界がある。住民訴訟はムダなお金を使うなというだけの問題なので、水利権とか治水は関係ない。ただ負担金を出すなと言うだけで、ダムそのものをつくってはならん、ということは言わない。
 環境問題に関しても、吾妻渓谷の美しさや、オオタカやイヌワシをどうするんだ、という議論は直接できない。つまり、地方財政問題という切り口でやるので、法廷で直接議論されない部分は皆さんが学習し、周辺を広げていかなければならない。
 ダムをつくるなということは請求の趣旨にあげないという限界がある。そういう限界をおさえながら、長期にとりくんで闘う必要がある。徳山ダムなどもとりくみをすべきときではないかなと思う。皆さんの情報をいただきながら、こちらも前向きにとりくみたい。


●群馬県自然保護団体連絡協議会

 『上毛新聞』に、吾妻川の酸性水の安全性の問題について投書が載った。そうしたら、県がわざわざ回答している。「中和してあるから大丈夫ですよ」と。
 その中で、面白いことを言っている。昭和58年、万座鹿沢口のコンクリートの三原大橋が真っ二つに割れて落ちたが、これは酸害ではなくて台風15号の出水によって河床が洗い取られたことによるものだと言っている。また、下流の渋川の近くの小野上村というところに東京電力の取水堰がある。これについても、川床が洗い取られるので補修工事をしている。原因は酸害ではない──とわざわざ説明している。そんなことは誰も聞いていなのに説明している。これは、何か後ろめたいものがあってフタをしているという気もする。もう一度洗い直して事実を調べることができたら、吾妻川の水質の酸性が強いことや、その影響が分かるのではないか。
 そして、翌日の新聞には、品木ダムはこれから観光振興の拠点として、公共事業の理解促進と地域の観光振興に活用していきたい、ということが出ている。しかし、建設省側は、これについては触れてもらいたくない部分がある。

 品木ダムは、自然の浄化能力によって酸性を弱くしているのではない。有限な石灰を投入して酸性を弱酸性にしている。だから、とても宣伝できるものではない。
 しかも、私たちが指摘しているように、使った石灰の処理についてはいまだにはっきりしない。いまは上流の沢筋に埋めているが、いつ二次災害がおきるかわからない。私どもの見落としていた問題点がこの中に隠されているかもしれない。調べて訴えていく必要があると思っている。
 国交省は吾妻渓谷について、取水量を減らして維持水量を若干流すと言っている。しかし、吾妻渓谷の素晴らしい渓谷は維持水量によってつくられているものでない。四季折々に水量が増えたり減ったり、自然の綾(あや)が吾妻渓谷をつくってきた。この素晴らしい自然環境を守っていきたいと考えている。

 私たちは、赤谷湖と鬼石町の下久保ダムという二つのダムで苦い経験を味わっている。しかし、八ッ場ダムには、その苦い経験がまったく生かされていない。だから、同じ過ちを繰り返すなと要求してきた。
 とくに吾妻渓谷の場合は、多くの文人・歌人たちが素晴らしい作品を残してきた。自然の真理と芸術の真理は同じでなければダメである。ダムができたり、水が枯れたらダメだ。秋桜子門下の、自然を対象にした俳句をたしなむ私としては、何とか残してもらいたいと思っている。

 イヌワシも、心のシンボルである。取り付け道路の工事の際は、大きな工事音が出た。しかし、国交省の職員は、イヌワシのためにさみだれ状に木を残してあるから、イヌワシには工事音が聞こえないなどと言った。最終的には、この工事は11月で休止になった。やっぱり私たちは子供の頃からイヌワシがいることを知っていて、それがいなくなるのはさびしい。目に見える理論的なことだけでなく、心の基として、自然体で守っていければ、そういう観点から私たちも関わっていきたい。


●千葉県議会議員

 いまは県議会の最中で、代表質問が行われている。自民党議員も八ッ場ダムの問題をとりあげたが、基本的には認めている。しかし精査しろ、とも言っている。私たちの感覚では、精査してそれからどうするんだという議論だと思う。
 民主党はいろいろ勉強して、私たちと同じような主旨で知事に迫った。しかし知事は、昨年の10月に1都5県の調査団をつくって現地へも行っているし、ちゃんとやっているということで、あまり突っ込んだやりとりはなかった。
 公明党は、公共事業は問題だ、という中で軽くすませた。共産党の代表質問は昨日あって、この間題を取りあげたが、あまり突っ込んだ議論はでなかった。私たち(市民ネット・無所属市民の会)は、明後日、一般質問の中で八ッ場ダムを重点的にとりあげる。
 カベになっているのは、水需要と人口問題である。これをクリアしないと、質問もはね返される。人口予測では、今の千葉県人口は約600万である。県は、平成27年度には627万8700人になると言っている。しかも、水道普及率が99%になるという、そういうとてつもない計画である。
 ところが、観光に関する議員勉強会で配られた資料では、人口が同じ平成27年で604万5500人と書いてある。これは千乗銀行の資料である。国の研究所で出している推計では609万人くらいである。ところが、県は627万人になると言い、国がだした予測数値を否定している。

 1都5県で調査チームをつくって現地に行ったというので、千葉県から行った人にヒアリングした。何の調査をしたかというと、4600億円の工事費の単価が適切かどうかを見に行っただけである。基本高水流量の2万2000トン/秒とか、あるいはキャサリン台風時のはげ山のときの状況と今を比べるとどうなのか、というような基本的な調査はまったくしていない。すべて国のデータにお任せである。このように、この1都5県の調査はまったくいい加減だという認識をもっていただきたい。


●埼玉県議会議員

 私が疑問に思うのは、「八ッ場ダムはダメですよ」と言われるけれど、ではどうしたらよいのかという代替案がないことだ。
 私は、酸性水の問題については、毎年10億円もかけてずっと未来永劫に石灰を投入することになっているが、それでよいのかと思っている。それで事業費が2.18倍に増える。埼玉県も29%使うから、かなりの負担をしけなければならない。そういうことを考えると、なぜ皆さんが代替案を出さないのかと思う。戸倉ダムの息を吹き返させて代替するとか、そういうのがないとうまくいかないのではないか。


●参加者

 利水・治水両面で、代替案は必要ない。治水の面では2万2000トン/秒という基本高水流量が法外すぎる。国交省の説明は、2万2000トン/秒のうち1万6000トン/秒については河川改修で、残りの6000トン/秒をダムで手当てするという。ダムは、今までつくった利根川永系のダム群で1000トン/秒、残りのうち600トン/秒を八ッ場ダムとなっている。では、残りの4400トン/秒についてはどうするか。この疑問が国交省との意見交換会で出たが、はっきりした答えは誰も言えなかった。
 そもそも、2万2000トン/秒が高すぎる。この基本高水はダムを作るための数字である。カスリン台風の時は1万7000トン/秒だったが、当時は戦後まもなくで、山が丸坊主だった。そういう状況のもとでの数字だ。事実、それ以降は1万トン/秒を超えていない。
 また、以前はもっと低い高水流量だったが、流域が開発されたといって2万2000トン/秒にした。これは数字のまやかしでしかない。1万6000トン/秒が河川改修でできるのなら、それに今できているダムをプラスすれば問題ないと、治水面では思う。
 利水面では、今後は人口が減っていく。しかも、ダムは2010年にはできないから、人口が減った頃にダムができる。その時点では利水が不必要になる。だから、代替案はいらない。


●参加者

 欧米の環境アセスメントでは、事業計画をつくるとき、つくった場合とつくらない場合の両面からきちんと検証する。水需要とか治水の問題はどうか、そういうところを検証して、八ッ場ダムはいらないという結論になる。まず、つくらない場合はどうなのかということを、ぜひ自民党は検証してもらいたい。


●参加者

 行政は100年に1度、200年に1度の危機管理が必要だ。


●参加者

 200年に1度の規模の洪水が来たらどうするということについては、河川審議会の中で、洪水と共に生きていこうというふうに転換している。だから、200年に1度という架空の議論に乗ったら、では1000年に1度はどうするんだ、という諸になる。全国の河川でも、100年に1度を採用したり、200年に1度を採用したりいい加減だ。そのへんを検証すれば、いらないということになるはずだ。


●参加者

 八ッ場ダムは本当に必要かどうかを議論していくことが必要。利水については、人口は言われたとおり減少する。地下水は工業用水の汲み上げが減っているので豊富にある。
 治水面では、千葉県では、たとえば利根川沿いに「田中調節地」というのがある。そこは堤防が低くなっていて、大洪水がきたらそこに流れ込むようになっている。ふだんは水田として利用されている。排水ポンプも整備されているので、冠水すると1日か2日で排水できる。冠水時の補償制度もある。そこに国からも補助金が出るとのことだ。
 これは、すごい安上がりな洪水対策。このような調節地や調節池を流域にどんどんつっていけばいい。「かもしれない」に莫大な税金を使うのではなく、万一もし冠水したら農地に補償すればいい。
 しかし、この「田中調節地」はずっと以前からあるのに、ほとんど注目されていない。なぜなら、金がかからないからだ。今後は、ダムをつくるのではなくて、こういう対策が治水上では必要だと思う。


●参加者

 治水に関してだが、国交省はこんなことを行っている。「八ッ場ダムができれば、前橋の所で60センチ水が上がらないようになる。堤防を決壊させる水が来ない」と。その根拠を具体的に聞いていないが、埼玉の上田知事も議会答弁でそういう言い方をしている。台風5号、13号で堤防が決壊したというが、もともとそこの堤防が弱かったのではないか。根拠が聞きたい。


●参加者

 そういう説明はどこでも同じだ。国交省が模範解答をつくっていて、それを配っているのではないか。
 前橋の洪水の時は、河川敷に県庁職員がたくさん車を停めていて、どかすのを忘れた人の車が流されてしまった。以後、河川敷は駐車場として使わないことになり、その後はまったく問題がでていない。新聞に河川敷の規制緩和が出ていたが、基本高水流量の根拠として使うために河川敷を開発している。海外では反対に、流域内の人を必要に応じて補償して移転させている。


●参加者

 河川敷に駐車してあった県庁職員の車が水没したという話について説明したい。国交省八ッ場ダム工事事務所で出しているきれいなパンフレットの中に、「前橋周辺の水害」ということでカラー写真が掲載されている。車が流されている写真だ。しかし、これは、本来、駐車してはいけない所に置いてあった車が流されたものだ。それを国交省は、台風被害による車の水没ということで宣伝している。国交省の宣伝も、そういう視点で見てほしい。
 もう一つは、八ッ場ダム関連工事の落札率についてだ。国交省のデータをみると、最近3年間の1千万以上の落札では、55件のち28件が97%以上、46件が94%以上、という結果が出ている。この結果を見れば、誰がどう考えても談合があった、ということだと思う。


●参加者

 小さな川でも、ダムがあるために自然が失われている。川にはダムをつくってはいけない。アメリカはいろいろ問題のある国だが、ダムを壊すように変わっている。そういう面では、やはり先進的だ。
 日本は、ダムの8割方に堆砂があって、貯水量がゼロに近づいている。実態は、砂防ダムになっている。また、砂が流れてこないから海岸がダメになっている。


●参加者

 以前、吾妻川の河原に降りてびっくりした。河原の玉石が足で踏み潰せる。安山岩系の岩だが、酸性のためにみんな砕けてしまう。また、魚はいっさい死の川だ。渋川という地名はそこからきている。
 ふるさと群馬で、八ッ場ダムだけは何としても止めたい。今から10年前にこういう盛り上がりがなぜなかったのだろうか。対案をだすべきという話もあったが、他の方の意見のように、対案はだすべきではない。ダムをつくらない、というのが対案だ。
 それと、政権交代がないとダメかなと思う。中曽根、福田、小渕、今度はその子供たち。地元は圧倒的に自民党王国だ。ゼネコンとの結びつきも強い。民主党にマニフェストをつくらせて、ダム間題を環境問題の大きな柱としてやらせていくのも一つのやり方でがないか。


●参加者

 以前アメリカのミシシッピが大氾濫したとき、ずっと水が引かなかった。ダムをつくった陸軍工兵隊が国民に謝った。ダムをつくると、本来、人が住むはずのない河川敷に人が住んでしまう。だから被害が大きくなった。そこで、今後はダムはつくらないとなった。一度ダムをつくると、永久に維持管理費がかかる。環境破壊も大きい。だから、ダムはダメだ。5、6年前の調査では、サミット参加国全部の公共事業を足しても日本の公共事業のほうが多かった。政・官・財のトライアングルは非常に有名で、日本はなぜそんなにダムをつくるのかと話題になった。


●コトバンジャンダム被害者住民の会

 コトバンジャンダムは、日本のODAでインドネシアにつくれたダムだ。しかし、住民はダムを撤去してくれと日本政府に要求している。その裁判を日本でしている。このダムは、日本政府がお金を出さなければできなかった。ODAは私たちの税金だ。年金などからでている。皆さんも関心を持って、裁判にもきていただきたい。

(文責・全国自然保護連合事務局)





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