■八ッ場ダムを止めよう!首都圏集会

各地からの報告

〜群馬、東京、千葉、埼玉〜





群馬県

八ッ場ダムを考える会  真下淑江さん



 「八ッ場ダムを考える会」は1999年夏に設立され、以降地元の方のお話を聞いたり、工事の進捗状況などを見守ってきました。はじめのうちは、こんなに問題があるんだということをいろんな方にお話しても、それは分かるけれどもう工事が進んじやって今から止めるのはムリでしょう、という反応がほとんどでした。新聞とかマスコミも、これは問題だという報道をほとんどしてもらえませんでした。
 それが昨年、事業費が増額になってから、はっきり流れが変ってきて、かなり新聞などが取り上げるようになりました。私たちは、いろいろな集会・シンポジウムを持ち、実際に現地に行って見てもらうということをずっとやってきて、動きが出てきたな、という感じを持っています。
 いま、現地では、どんどん工事が進められています。しかし、その工事は、今までダム計画があるために道路も直されない、吾妻線も老朽化している、ということで、国道と吾妻線の付け替え工事、それと「現地再建」ということでやっています。いま住んでいる所の上に代替地を造成をしています。国有林を切って、山を切って谷を埋めるようなものすごい工事をしています。現地にまだ行っていない方は、ぜひ現地を見ることをおすすめします。
 私たちは昨年の12月に緊急集会を開き、知事と議会あてに要請書を提出しました。いまは、国交省と県知事、議会あての署名運動を進めています。2月19日に議会に提出しました。5362筆で、うち県内は2989、東京・埼玉・栃木・茨城などから2373の署名をいただきました。署名はいまも継続しています。八ッ場ダムのことを知らない方があまりにも多いので、まず知ってもらうことが大事です。
 奈良の大滝ダムでも問題になりましたが、八ッ場ダムも非常に地質が悪いということがここにきてクローズアップされました。シンポジウムでもその間題をとりあげました。
 下久保ダムのある鬼石町の町長も、下久保ダムができても地域は活性化しないし、本当に負担ばかり大きいと述べました。また、下久保ダムのすぐ脇に譲原地区という地すべり地帯があります。
 地すべり対策に三百何十億円かのお金を使っているが、下久保ダムの中にある断層から水が漏れて、新しく水の流れが変ったという、そのような指摘も地質学者の専門家からありました。そんな状態でダムをつくったら、どんなに大きな負担を私たちが負っていくか、知れば知るほど恐ろしくなります。
 それを止めるためには、まず八ッ場ダムを知ってもらうことです。話をしたり、現地に来ていただくことに大きな力を注ぐ。住民の方たちともつながりを持って、総会のときに詩を書いてもらったり題字を書いてもらったり、来てもらって、今まではいっさい反対ということは言えなかった地域でしたが、事業費の増額が発表されてからは少し流れが変ってきて、名前を出して会員になってくれた方もいます。このように、状況が変わっています。



東京都

八ッ場ダムを考える小平の会  深澤洋子さん



 「小平の会」ができたのは昨年の秋です。八ッ場ダムの問題を東京でも、ということで八ッ場ダムを考える会の渡辺さんにパンフレットを送ってもらいました。私は小平環境の会というのを、主にゴミ問題をやっていましたが、水問題でがんばっている方と、一緒にやりましょうということになりました。
 最初に、ちょうど紅葉の時期に八ッ場ダム工事現場と川原湯温泉に行きました。こんなきれいな所にどうしてダムをつくるのだろう、許せないな、と小平からの3人の参加者が中心となって小平で会をつくりました。
 それで、とりあえず請願を小平市議会に出しました。皆さんは八ッ場ダムを知らないので、知らせなきゃと考え、2月7日に国分寺で講演会を開く準備をしました。そうしたら、11月末に事業費倍増案がでてきて、東京都はそれをすぐ可決しました。
 12月の都議会には、傍聴に行ったり議員に働きかけたりしました。民主・共産・社民などの人たちは熱心に聞いて、動いてくれました。しかし、数で負けて、都議会では通ってしまいました。でも、予算審議は続いているので、働きかけは続けています。
 とにかくそのシンポ・講演会に人を集めようということになりました。多摩のほうは地下水がまだ生かせています。小平では18%くらいしか使っていないが、もっと使いたい、大事にしていきたい、という思いがあり、ほかには100%地下水を使っている所もあるし、そういう意味で、八ッ場の水はいらないということで、水問題に関わっている市民グループと協力して、2月に集会を開きました。集会には約120人が参加してくれました。各地の市民運動のリーダーの参加もあり、運動が広がっていけばよいと思っています。
 東京では、小平・小金井で地下水の保全ということで議員もがんばっています。3月議会では、八ッ場ダムに関する意見書・要望書を出します。可決されそうだとも言われています。全会派を回った感触では、自民、公明や民主の議員たちは紹介議員は引き受けてくれませんでしたが、地下水は大事にしたいという思いは保守系の方にもあるので、前向きに考えさせてください、といわれています。
 ただ、都議会は負担額倍増を決めていますので、それとの関係を聞かれる方もいます。3月議会では決まらず、継続審議になるのかなと思っています。議会で意見書を出せばどうにかなる、というものでもありませんが、やはりほかの市からも上がってくればよいと思います。
 住民訴訟については、やったことがありませんが、協力できればやっていきたいと思います。


千葉県

八ッ場ダムを考える千葉の会  北沢真理子さん



 千葉県内の小櫃川の源流域に計画された「追原(おっぱら)ダム」は、2001年の春に、時のアセスに該当するということで、守ることができました。
 いまは、言葉を持たない動植物を犠牲にして水を貯める、そういうことを許して良いのか、ということで50年前に計画された八ッ場ダム計画への反対運動に関わっています。
 昨年、「八ッ場ダムを考える千葉の会」をつくりました。その前に、1999年に初めて川原湯温泉に行きました。その時に見た看板が「ようこそダムに沈む川原湯温泉へ」という、すごく自虐的な感じだったので、ショックでした。
 泊まったのは若山牧水が愛したという宿でした。こんこんと湧き出るお湯の贅沢さに感動しました。道祖神や、人々に守られてきた自然の豊かさにも惹かれました。50年間も大事な人生を翻弄されてきた地元の皆さんの苦しみが、時代に取り残されているような川原湯温泉のたたずまいを見て、その後、みんなで何度も長野原町を訪れて、この地に対する加害者として私たち千葉県民も発言していかなきゃいけないと、八ッ場ダム計画を見直すよう、県への申し入れも行ってきました。
 堂本知事にもいろいろ話はしました。しかし、知事は、水利権の問題で、千葉だけが断るわけにはいかないと、今もその姿勢を変えようとしていません。
 千葉では昨年、佐倉、習志野、船橋などの市議会が、千葉県に対し計画の見直しを要請する決議をしました。ほかの市でも動きがああります。
 私たちは、人の集まる所にタペストリを展示し、川原湯温泉の素晴らしさとか、50年経っても本体工事が始まっていないダムの問題点の数々、財政破綻の千葉県が膨大な経費をそこに支出していることなどを訴えています。凧をあげてアピールもしました。千乗県知事は環境派ということで当選しました。しかし、環境破壊をするこういう大型の公共工事はそのまま前の知事から引き継いでいます。
 他方で、養護施設、定時制高校、県立病院などは予算がないといって統廃合を進めています。何度か県と交渉しました。昨年は県の財務課の方と話し合いをしました。現地ではダムの付帯工事として、あまり使われそうになり4車線の道路をつくったりしているが、そういうものを千葉県はチェックしないのかと聞いたら、「国のほうから今年度はこれだけ必要だ、と言われればそれをそのまま出すのみだ。千葉県としては自分たちの拠出したお金がどういうふうに使われているか、まったくつかんでいないし、知らない」という答えでした。もう唖然、呆然でした。
 昨年、国が事業費が4600億円かかると発表し、千葉にもそれについて打診があり、副知事を中心にした検討会議を急いでつくって、1週間たらずで国交省の見積りを全面的に認め、早々と八ッ場ダムは必要である、だから今回の予算修正はそのまま受け入れるという答申をすぐに出しました。
 私たちは2月19日に、堂本知事に、治水・利水の両面から考えて八ッ場ダムは不必要であることを認識して欲しい、今回の事業費引き上げに関して、無駄な支出はしない、巨大な環境破壊を群馬県民に押し付けることのないよう、計画の中止を求める要望書を提出しました。
 また、県義会に対しては、今回は継続審議にすること、視察団を派遣して調査すること、市民も参加した検討委員会を開催すること、の3つを求めた請願書を、5つの会派、12人に紹介議員になってもらって提出しました。これから各常任委員会の傍聴もやっていきます。
 千葉にも、とても良い森があります。地元の人たちが一所懸命守って育てている森のそばに、その辺一帯の飲料水をくみ上げる施設があります。とてもきれいな水、安くておいしい地下水を飲んでいる地区でも、八ッ場ダムの完成によって高くてまずい水を半永久的に買わされるということになります。
 これは、千葉県のほとんどに関係してくる問題です。千葉県は赤字財政なので、ムダなダム工事に使う予算などありません。八ッ場ダムはムダだということを、自分たちの問題と思っていない多くの県民に知らせていって、群馬の皆さんと交流しながら楽しく真剣にやっていきたいと考えています。


埼玉県

八ッ場ダムをストップさせる埼玉の会  藤永知子さん



 昨年6月に「首都圏のダム間題を考える議員と市民の会」に参加し、埼玉は最大の利水者なのに埼玉に会がないということで、話を聞き、「八ッ場ダムをストップさせる埼玉の会」をつくりました。
 9月に嶋津さんの学習会をやりましたが、さいたま市民の関心度はとても低いものでした。これから運動をどうするかと悩んでいたところに、11月にダム計画の変更案が出ました。それで、いろいろとアタフタしている状態です。
 12月5日に東京都の集会に参加し、埼玉では、県知事に会いたいと民主党の議員に依頼し、「首都圏の会」からも来てもらって、上田知事に面会しました。その時に言われたのは、公共事業のあり方が、小さく産んで大きく育てるというやり方で、上田知事も批判していて十分検討したいと言っていました。
 その後、八ッ場ダムを検討する「懇話会」の立ち上げがあって、12月17日に第1回、学識者というのか、大学の先生や会計検査院の出身者、NGOなど6人の識者が集まって会議、それから2月4日までほぼ6回開催されました。現地視察も1回やっています。
 県議会関係では、民主党の議員団の現地視察が12月26日、現地群馬の方の協力も得て、中村庄八先生、嶋津先生のレクチャーと、現地長野原町長と鬼石町の関口町長にも来ていただいて、両方の話を聞きました。民主党の議員たちは、これはやっぱりおかしいという印象を持って帰ったようです。埼玉県では八ッ場のヤの字も出てきません。八ッ場ダムの読み方すら知らなかった懇話会の委員に、一応その中で水需要予測の問題を取り上げて、誇大な水需要ではないかとの意見もありました。戸倉ダムから手をひきましたが、戸倉は準備してあったようで、知事が替ったところで出された案です。もともと戸倉は撤退でした。しかし、八ッ場ダムは計画どおりです。
 2月4日の懇話会の答申を見たら、やむを得ず、という答申が知事あてに出ました。八ッ場ダム事業に参加するのはやむを得ないということです。付帯意見がいくつか付いていて、水需要予測、工期が延びたときの責任、減額要求とかの付帯意見が出ました。問題はあるが止むを得ず、ということです。でも、これはOKということなので、それを受けて上田知事のほうは議会にかけました。
 私たちは、2月11日にさいたま市で集会を開きました。113名の参加があり、マスコミ(埼玉県内版)も朝日・毎日・埼玉新聞、埼玉テレビが取り上げてくれて、少しは八ッ場のことが知られたかなと思います。現地からのアピールと、そして公開質問状を出しました。上田知事には翌12日、返事を25日までに、と期限を切ってお願いしました。しかし、国交省に問い合わせているので待って欲しいということで延ばされています。
 議会のほうは、代表質問で民主党が取り上げました。しかし、上田知事の答弁は、特に治水の面では国交省の言っていることそのまま、水需要予測にしても、それは職員が12月に出したものと同じです。
 知事は、2100万円で家を建てたら4600万円になった、みんなどう思う、というような言いかたで、お金のことは言う。基本的に国のやり方については、国交省の方法でそのままやればやはり需要予測はその数字になる、それ以外のやり方で方法を考えなければ、という考えはあるようだが、なかなかそれを覆して八ッ場をやめるというふうな理論付けは懇話会の委員も難しい、と言っていました。
 3月の予算特別委員会で取り上げられた時も、工期の問題と需要予測の問題と、暫定水利権の問題、特に埼玉県で問題になるのは今回変更案で安定から冬に水利権を移しています。というのは、普通はもう間に合っている、冬場の水手当てが不十分、潅漑期には農業用水の合理化で水利権があるが、冬場は暫定水利権になっている。その暫定水利権を八ッ場ダムに参加することによって安定水利権にするために参加する、という。だから水利権の問題は埼玉県では避けて通れないのかもしれない。これを国に言っていかないとダメですねっていうことは議員も言っていましたが、上田知事はこれは難しいと、現状の中で埼玉県がどうしていくかということになるという答弁でした。水利権の問題、これは国会でも取り上げていただかない限りは、なかなか難しい問題があるんだと感じました。予算委員会での質疑も聞いていると、国交省の答弁そのままのような印象でした。
 公開質問状の答えは、多分来週あたりには出るんじやないかと思います。私たちのほうでは、再質問をして、それから監査請求を起こしていきたいと考えています。その後に住民訴訟を考えるかどうかという順序になります。私たちのほうは根拠のある数字について監査請求を起こしていきたいと思います。
 今後は、今回の議会では議決されていないが、たぶん合意されて、上田知事が承認を求めた案件について全会派で承認するという形になると思います。引き続き運動を進めていきたいと考えています。

(文責・全国自然保護連合事務局)





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