■「自然と環境を守る全国交流会」参加団体


バイオハザード予防市民センター









■震災で病原体を扱うバイオ施設は大丈夫だったのか?

 原発の放射能と同様、平常時のみならず災害時に外部に漏洩してはならないものに病原体がある。放射能より問題なのは、直ちには検知できないこと、漏洩がわずかでも一定の条件下では増殖することである。しかし、病原体を扱い、遺伝組み換え実験や動物実験を行う施設(以下「バイオ施設」と言う)の立地について国内には未だ直接規制する法令もなく、一般建築物よりも厳しい耐震基準も無いに等しい。
 バイオ施設では、病原体(B)のみならず放射性物質(A)、さまざまな危険物(化学物質)(C)によるABC公害が発生する可能性がある。また、故吉村昭氏は、1923年の大正関東大地震による火災の主要な発火源は当時の調査結果では大学などの実験室(化学物質)からのものだったと講演している。
 都心や住宅密集地に多くのバイオ施設が立地し、またそれ故に危険性を察知した住民により建設反対・研究業務規制などを求める裁判闘争を含む運動が80年代より全国各地で取り組まれてきた。最近では神奈川県の武田薬品研究所建設、東京都府中市への国立医薬品食品衛生研究所P3施設移転計画などで住民による異議申し立てが相次いでいる。
 当センターは、こうした住民の運動を支援し、バイオ施設の法的・社会的規制により「市民的公共性を確立すること」を目的に99年に設立された。
 今回の3.11の大地震・津波・液状化で、バイオ施設はどうなったのか。当センターでは、文科省らに文書で実態の把握を要望したが、事業者からの報告・届出がないので調査する必要は無いという「回答」を受け取った。


■「原子力村」と同じ構造の「バイオ村」
  〜公共性を独占する「行政セクター」と「企業セクター」〜

 バイオ施設は全国で1000をはるかに超えると言われるが、その実態(立地、実験内容、漏洩の有無など安全管理)について、政府(文部科学科学省、厚生労働省など)は正確に把握してはおらず、地方自治体も法令上の義務もないことを口実に政府にお任せである。
 2007年の感染症法改正時に耐震基準について厚生労働省の審議会(身内で構成)で話し合われたが、驚くべきことに既存のバイオ施設の多くが必要な耐震性が確保されておらず厳しい耐震基準を定めることに無理があるという理由で見送られた。
 政府省庁が地方自治体や住民を排除しながら実際の安全管理は事業者まかせであること、バイオ施策推進、事業者都合最優先の省庁が安全管理も担っている構造は、原発震災であらわになった「原子力村」と同じである。


■法・社会的規制と「市民セクター」という
  新たな社会システムの構築の課題

 バイオ問題のみならず原子力、環境、福祉などの諸問題など現代社会の安全性の問題は、企業・経済事業体のあり様(企業セクター)と国家・行政のあり様(行政セクター)と不可欠の関係にある。ところが、こうした問題で主に被害や影響を受ける側の一般市民はせいぜい「住民」「消費者」という受身の立場しか与えられておらず、何か大きな被害や不利益にあってからでないと、ものが言えなかった。しかし、この既存の2つのセクターの制御体制だけでは信頼性を欠き、社会的正当性を維持できなくなっているのが現状である。新たな公共性を担う「市民セクター」という3つ目の社会システムの構築が必要である。
 私たちはこの立場から、法・社会的規制には、
  • 市民参加の原則を立案、執行、査察、評価のあらゆる段階に盛り込む
  • そのために徹底した情報公開と政府・企業等から独立した第三者機関の規定を設ける
  • 定期的な公聴会等を開催し、3者による対等なコミュニケーションを重ねる
  • 市民生活の安全と人権=人格権の擁護という価値基準に従い、罰則や制裁を厳格に規定する
 ことが不可欠であると考え、法令等の試案、リスクの共同評価の提案を行ってきた。(注)
  (注)「法的な基盤整備を含めたバイオハザード対策の社会システム構築のための提言活動」
     報告書(バイオハザード予防市民センター、2005年8月)

(2011年9月)



◎バイオ施設を感染源とする生物災害の主な事例




◎2つの確定判決(2005年)から
  〜国立感染研実験差し止め訴訟、JT情報公開訴訟〜








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